P-I-80
胃食道逆流症を合併した先天性心疾患症例の検討―噴門形成術と心臓手術のタイミング―
兵庫県立こども病院心臓血管外科
井上 武,大嶋義博,吉田昌弘,島津親志,松久弘典,日隈智憲

【目的】胃食道逆流症(GERD)を合併した先天性心疾患(CHD)症例の治療においては,消化器症状や呼吸器症状のために,周術期管理に難渋することが多い.今回,手術適応のあるGERDを合併したCHD症例の問題点を検討した.【対象と方法】2000年から2006年までの 7 年間に当院で経験した,GERD,CHDの合併症例 9 例を対象とした.心疾患の内訳はTOF 2 例,TAPVR 2 例,AVSD 1 例,IAA complex 1 例,double aortic arch 1 例,ASD 1 例,HOCM + 僧帽弁副弁 1 例で,うち 3 例はFontan candidateであった.GERDに対しては,臨床症状,上部消化管造影やpHモニタリングの所見から全例が手術適応と判断された.また,先天性気管狭窄を 1 例,気管軟化症を 1 例,Down症候群を 3 例に合併していた.噴門形成術は 8 例に行われ,手術時平均月齢は9.7 ± 8.1カ月,平均体重は4.8 ± 1.5kgであった.1 例はNorwood術後,噴門形成術待機中に突然の換気不全で死亡した.心疾患手術は 8 例に施行され,噴門形成術前に行われた 6 例をA群,噴門形成術後に行われた 2 例をB群とし,比較検討した.【結果】心疾患手術時平均月齢はA群2.5カ月,B群17.5カ月,平均体重はそれぞれ3.4kg,7.5kgであった.A群のうち 5 例は心疾患術前より喘鳴,慢性咳嗽,反復上気道感染等の呼吸器症状を呈し,気管狭窄を合併し気管切開中の 1 例を除き,心疾患術後の平均挿管期間は64日であった.しかし,噴門形成術後には,ほとんどが術当日に抜管可能となった.B群では,術前よりみられた呼吸器症状が噴門形成後に改善しており,心疾患術後の平均挿管期間は0.5日であった.【結語】呼吸器症状を伴うGERDを合併したCHDの治療においては,可能なかぎり噴門形成術を先行する方針が望ましいと考えられた.

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