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心房中隔欠損症の至適手術年齢についての検討
大垣市民病院小児循環器新生児科1),胸部外科2)
倉石建治1),恒川智宏2),石本直良2),西原栄起1),石川 寛2),横山幸房2),玉木修治2),田内宣生1)

【背景】近年低体重での無輸血開心術が可能となり,ASDの手術も低年齢で行われているが,カテーテル治療は年長児にしか行えない.そのなかで乳幼児期に発見された自覚症状のないASDの適切な治療時期は不明である.【目的】手術と術後の経過からASDの至適手術時期を探ること.【対象】1997年から2006年までの10年間に当院において15歳以下で手術を受けた,合併心奇形のないASD 48例.二次孔型47例,静脈洞型 1 例.男女比は17:31.術前の肺体血流比は平均2.6(1.5~6.0).術後観察期間は平均5.3年(0.4~9.8年).手術時年齢は平均6.3歳(1.7~15.4歳).【方法】対象を手術時年齢によりA群(1~2 歳)9 例,B群(3~4 歳)11例,C群(5~9 歳)22例,D群(10~15歳)6 例に分け,手術時間,人工心肺時間,大動脈遮断時間,術後貧血の程度,治療期間,合併症の割合につき診療記録から後方視的に調べ比較した.【結果】A群,B群,C群,D群の順におのおの中央値 ± 標準誤差を示す.手術時間(分)は170 ± 18,245 ± 16,184 ± 7,257 ± 24,人工心肺時間(分)は40 ± 12,57 ± 5,45 ± 3,42 ± 6,大動脈遮断時間(分)は19 ± 6,23 ± 2,20 ± 1,22 ± 2,手術前後のヘモグロビンの変化(g/dl)は-1.7 ± 0.4,-1.9 ± 0.3,-1.6 ± 0.2,-1.1 ± 0.3,同じくヘマトクリットの変化(%)は-5.2 ± 1.0,-6.4 ± 0.9,-5.0 ± 0.6,-3.9 ± 1.0,ドレーン挿入期間(日)は 3 ± 0.5,3 ± 0.3,3 ± 0.3,3 ± 0.3,術後酸素使用日数は 3 ± 1.6,3 ± 0.7,3 ± 0.4,3 ± 0.6であり,心嚢水貯留,胸水貯留,感染症,創し開,不整脈を含めた合併症の延べ数は,A群 1,B群 8,C群10,D群 3 である.いずれも統計学的有意差はなかった.【考察】有意差はないがD群の手術時間はA,C群に比し長い傾向にあり,A群は他群に比し合併症が少ない傾向にあった.術後早期までは低年齢でも悪くなく,むしろ良い可能性もあるが,至適手術時期の決定には創の状態,発達への影響等遠隔期の検討を要する.

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