P-I-82
小児開心術後の前縦隔炎に対する開胸下洗浄治療法の有用性
静岡県立こども病院心臓血管外科
廣瀬圭一,藤本欣史,太田教隆,中田朋宏,登坂有子,井出雄二郎,岩出珠幾,坂本喜三郎

【目的】開心術後の合併症である前縦隔炎の治療方針・成績について検討した.【治療方針】対象は1985年 5 月より2006年12月までに外科的介入を必要とした前縦隔炎は23例.身体所見(発熱・創部離開・胸骨動揺など),血液検査(WBC・CRP上昇),培養検査(浸出液・ドレーン排液),CT検査などで疑われ,かつ抗生物質治療抵抗性の場合,開胸した.初期の 4 例は洗浄ドレーンを挿入し一期的閉胸とした.後期の19例は腐骨やpusを切除し,開胸のまま数日間イソジン生食で洗浄,CRPの低下傾向および縦隔内組織培養陰性を待って閉胸を行う方針とした.【対象】二期的閉胸を行った後期19例を検討した.主疾患はasplenia 4,HLHS・IAA/CoA complex各 3,TGA・TOF・PAcVSD各 2,TAPVC・SV・VSD + MR各 1.平均月齢は14.8カ月(6 日~6 歳10カ月),体重は6.1 ± 3.8kg.平均先行手術時間は396 ± 148分,人工心肺時間は160 ± 60分(n = 18),先行手術より開胸までの期間は24.7日(3~121日).起因菌は重複を含めてMRSA 11,Candida・MSSA各 4,Pseudomonas 1.死亡率・入院期間・抗生剤使用期間・洗浄期間・ドレーン挿入期間などについて検討した.【結果】平均追跡期間は47.7カ月(1 カ月~9 年 4 カ月).院内死亡は 2,いずれも前縦隔炎は治癒したが,1 例は心不全がコントロールできず41日目にMOFで,もう 1 例は腸回転異常症のため手術・縫合不全を併発し61日目に失った.遠隔死亡はなし.閉胸までの平均洗浄期間は8.5 ± 3.7日.起因菌がMRSA群では非MRSA群と比較して術後入院期間が長い傾向にあった(86 ± 60 vs 39 ± 16日,p = 0.08).その他の因子に関しては感染に対してハイリスク群(asplenia,HLHS)とローリスク群,およびチアノーゼ群・非チアノーゼ群などで比較検討したが,有意な差は認めなかった.【結論】内科的治療に抵抗性の前縦隔炎では開胸・洗浄し,二期的閉胸とする当科の治療方針は妥当であると考えられた.

閉じる