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小児開心術における混合静脈血酸素飽和度と脳酸素飽和度の相関関係の検討
北里大学心臓血管外科
井上信幸,宮地 鑑,宮本隆司,山本信行,三好 豊,鳥井晋造,小原邦義

【目的】体外循環時の脳血流評価として脳酸素飽和度:rSO2はその簡便性と非侵襲性から臨床的に広く用いられている.しかしながら体外循環時における混合静脈血酸素飽和度:SvO2とrSO2の関係についてはいまだ不確定な部分が多い.今回われわれは標準的な小児開心術である心室中隔欠損症(VSD)症例におけるrSO2とSvO2の相関について検討した.【対象と方法】2004年 1 月から2006年 8 月までに行った 5kg以上10kg未満のVSD患児のうち,体外循環開始時から終了時までrSO2とSvO2の測定が同時点で行われた25症例を対象とした.男10例,女15例で,年齢は平均8.7 ± 5.7カ月(1.6~21.7),体重は平均6.2 ± 1.8kg(4.0~9.9)であった.VSDは I 型:2 例,II型:23例で,術前Qp/Qsは2.6 ± 0.7(1.2~3.7)であった.人工心肺中,SvO2を70%以上に保つように管理,ヘマトクリット値が18%未満の場合は輸血を行う方針とした.各症例のrSO2とSvO2との経時的変(Ht)化を検討してその相関性を評価した.【結果】人工心肺時間は平均87 ± 34分(48~192),大動脈遮断時間は平均53 ± 25分(21~100),手術時間は平均178 ± 40分(110~290)であった.最低Htは平均19.0 ± 3.3%(4.0~24.9)で,輸血は 6 例(24%)に行った.各症例のrSO2とSvO2の経時的変動はほぼ一致していた.また回帰分析による重相関係数は平均0.69 ± 0.17(0.33~0.93)であった.各症例のSvO2が70%の時のrSO2は平均51.1 ± 7.9%(36.2~65.5)であった.【結論】VSD症例における人工心肺中のrSO2とSvO2にはある程度相関が認められた.SvO2の安全限界を70%以上とすると脳組織の安全限界は50%前後であることが示唆された.

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