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小児開心術後におけるヒト心房性ナトリウム利尿ペプチドの使用効果
聖隷浜松病院心臓血管外科1),小児循環器科2)
杉浦唯久1),小出昌秋1),渡邊一正1),松尾辰朗1),武田 紹2),中嶌八隅2),長崎理香2)

【目的】ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド(以下ハンプ)は急性心不全の治療薬として心臓外科領域でも汎用される薬剤であるが小児,新生児領域での報告は少ない.今回われわれは術後管理にハンプを使用した小児開心術症例におけるハンプの使用効果について検討した.【方法】2004年 3 月から2006年 9 月までに術後ハンプを使用した小児開心術症例40例(32人)について検討した.疾患の内訳は両大血管右室起始症 8 人,単心室症 3 人,完全型房室中隔欠損症 3 人,心室中隔欠損症 3 人,総肺静脈還流異常症 2 人,左心低形成症候群 3 人,ファロー四徴症 2 人,完全大血管転位症 1 人,三尖弁閉鎖症 1 人,総動脈幹症 1 人,肺動脈閉鎖症 1 人,大動脈離断症 1 人,三心房心 1 人,僧帽弁閉鎖不全症 1 人,心房中隔欠損症 1 人だった.投与前後の比較にはpaired t-testを用いp < 0.05で有意差ありとした.【成績】患児の平均月齢は10.3 ± 12.3カ月,平均体重は5.9 ± 4.9kgだった.ハンプの初期投与量は平均0.08μg/kg/min,維持量は平均0.10μg/kg/minだった.ハンプ投与前(6 時間)の平均尿量は2.32 ± 1.20ml/kg/hr,投与後(6 時間)の平均尿量は3.11 ± 1.89ml/kg/hrとハンプ投与後有意に増加した(p = 0.005).ハンプ投与前の平均中心静脈圧は10.7 ± 3.3mmHg,投与後(6 時間後)は9.2 ± 2.8mmHgとハンプ投与後有意に低下した(p = 0.0002).収縮期血圧はハンプ投与前が平均93 ± 14mmHg,投与後(1 時間後)が平均85 ± 13mmHgとハンプ投与後有意に低下した(p = 0.001).【結論】小児開心術後のハンプ使用症例において尿量は有意に増加し,中心静脈圧および収縮期血圧は有意に低下した.ハンプは小児開心術後においても急性心不全の治療薬として有用であると考えられる.

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