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チアノーゼ性先天性心疾患成人例における喀血の検討
千葉県循環器病センター小児科1),心臓血管外科2)
白井丈晶1),立野 滋1),川副泰隆1),丹羽公一郎1),椛沢政司2),杉本晃一2),松尾浩三2)

【背景】喀血はチアノーゼ性先天性心疾患(以下CCHD)の成人において,致死的症状の一つであるが,発症率や発症時期についての報告は十分になされていない.【目的】CCHD成人例における喀血の発症率および臨床的特徴を明らかにする.【対象】対象は,1998年 4 月から2006年 1 月にかけて成人先天性心疾患外来を受診した18歳以上の未修復または修復不能のCCHD患者37例.疾患の内訳は,Eigenmenger症候群(EM)13例.肺血流減少型CCHD24例(うちMAPCA 9 例).このうちDown症 6 例,22q11.2欠失症候群 2 例が含まれていた.【方法】診療録に喀血の記載がある患者を喀血群とし,後方視的に検討した.【結果】対象患者37例〔男20:女17,年齢中央値32.9歳(18.2~55.3)〕のうち,喀血群は14例〔37.8%,男 8:女 6,年齢中央値35.1歳(22.0~55.3)〕で,非喀血群は23例〔62.2%,男 9:女14,年齢中央値30.8歳(18.2~43.0)〕であった.喀血群は死亡例 2 例,入院例 5 例であった.EM群(6/13例)と肺血流量減少型CCHD群(8/24例)間に発症率の有意差はなかった.Down症は全例喀血を認めなかった.MAPCA例では 9 例中 3 例に喀血を認めた.喀血の初発年齢(平均27.4歳,7.8~54.0)は,20歳代前半(5/14)および30歳以上(6/14)に高い傾向があった.非喀血群に比し喀血群ではHt(61.3%),Hb(20g/dl),INR(1.55)が高かった.血小板数と酸素飽和度に群間差はみられなかった.【結語】成人CCHD患者における喀血は約1/3と高頻度であり,20歳前半に散見されはじめ,30歳以降に増加する傾向にある.赤血球増多や凝固異常の関連が示唆されたが,有意な危険因子は認めなかった.今後,発症の危険因子を検討するには,母集団を増やしたさらなる検討が必要である.

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