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成人期先天性心疾患患者における精神心理評価
さいとうクリニック1),東京女子医科大学循環器小児科2)
太田真弓1),篠原徳子2),富松宏文2),山村英司2),森 善樹2),中西敏雄2)

成人期先天性心疾患では就業や結婚,出産などの社会的適応において困難な症例が多く見受けられる.そのうち心疾患に起因する症状による阻害ではなく,不定愁訴や抑うつのために適応不全となり,QOLの低下を来している例も見受けられる.成人先天性心疾患患者に対して精神心理学的評価を行い傾向,それらの症状がQOLに与える影響について検討した.対象は東京女子医科大学循環器小児科に心カテ,手術,精査治療目的にて入院した60例(男24:女36,20~52歳)に精神学的半構造的面接,学歴,職歴,家族歴などの社会的背景の聴取,MMPI(Minesota Multiphasic Personality Inventory)を施行し,精神心理学的診断とともにMMPIの異常値とQOLとの関係を検討した.10例(17%)に精神心理学的障害を認め,14例(23%)では精神心理的症状がないにもかかわらずMMPIで心気症,抑うつなどの尺度で異常値だった.MMPIのデータと学歴,職歴,家族歴などの社会的背景との相関は統計学的には有意ではないものの,職歴と不安との相関の傾向が認められた.精神心理学的症状がない場合にも,潜在的な不安や抑うつは存在している可能性があり,それらが社会適応に影響を及ぼしている可能性がある.

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