B-II-5
左心低形成症候群・重症大動脈弁狭窄における心房間交通障害の問題点
長野県立こども病院循環器科1),心臓血管外科2)
内藤幸恵1),大西優子1),梶村いちげ1),金子幸栄1),安河内聰1),里見元義1),打田俊司2),原田順和2)

【背景】心房間狭小(restrictive FO:RFO)を伴う左心低形成症候群(HLHS),重症大動脈弁狭窄(cAS)においては,肺静脈うっ血による肺微小循環障害のため高いmortalityが報告されている.【目的】心房間交通に問題があるHLHSおよびcASにおいて,治療成績と予後について臨床面と病理面から検討すること.【対象・方法】1995~2006年に当院で経験した心房間狭小/閉鎖のHLHS(7 例)とcAS(5 例).病歴記録から後方視的に臨床経過と病理組織所見を調査し,選択された治療と結果について比較した.【結果】臨床経過:RFOのHLHSでは術前SpO2は低くXP上スリガラス状の肺野を認めた.全例,日齢 1~5 にNorwood手術を施行したが6/7が死亡.1/7がFloranなどの肺血管拡張療法で生存.RFO合併cAS全例が胎児診断され,胎児期よりEFEを呈し,在胎28~31週の間にFOの閉鎖を確認.治療はBAVのみ(2/5:生存),BAV施行後Norwood様手術を追加(2/5:死亡),surgical intervention(bil banding後にNorwood様手術)(1/5:死亡).両群で長期生存した 4 例では,長期間の胸水流出と閉塞性黄疸(TB 26.8 ± 19.1 mg/dl,DB 19.8 ± 14.4 mg/dl)を伴う肝機能障害を呈した.【病理所見】剖検 5 例〔HLHS with RFO(4),cAS(1)〕では,著明な肺リンパ管の拡張とリンパ管周囲の線維化を認めたが,肺静脈閉塞や弾性板肥厚による肺静脈の動脈化は認めなかった.肝では強い胆汁うっ滞と肝硬変を示した.【結語】RFOを示すHLHS/cASの予後は不良で,救命し得た症例でも肺リンパ管拡張に伴う難治性胸水と,閉塞性黄疸が問題になる.RFOのHLHS/cASは,胎内ですでに多臓器への影響が進んでいることが予後に影響を与えている可能性があり,予後改善のためには胎児期からの肺静脈圧減圧のためのinterventionが必要と考えられた.

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