C-II-12
チアノーゼ性心疾患に合併した脳膿瘍の臨床的検討
千葉県こども病院循環器科1),心臓血管外科2),集中治療科3)
建部俊介1),中島弘道1),山澤弘州1),菅本健司1),犬塚 亮1),青墳裕之1),上松耕太2),内藤祐次2),青木 満2),藤原 直2),杉村洋子3)

【目的】チアノーゼ性心疾患に合併した脳膿瘍の特徴を,非心疾患児と比較しながら明らかにする.【対象と方法】小児脳膿瘍15例をチアノーゼ性心疾患(c群:7 例)と非心疾患(n群:8 例)に分け,後方視的に臨床経過を比較した.p < 0.05を統計学的有意とした.【結果】c群の基礎疾患はTOF/PA 2 例,ECD,DORV,Ebstein奇形,HLHS,CoA各 1 例,n群は副鼻腔炎 4 例,先天皮膚洞 1 例,疾患なし 3 例.c群の発症年齢は平均6.2(1~13)歳,全体は6.9歳.免疫学的リスクとしてc群asplenia,22q11.2欠失,重症アトピー皮膚炎が各 1 例.n群 3 カ月以下乳児が 3 例.入院前のc群平均SpO281%,Hb16.8,CTR65%,EF48%で,心不全の診断は 4 例.初発症状は両群で発熱が最多,c群に頭蓋内圧亢進症状が多い傾向があった.入院時,またはその直前後の平均CRPはc群で有意に低値(c群1.7 < n群11.1mg/dl p = 0.02),診断確定は全例CTまたはMRIで,発症から平均17日を要した.膿瘍の局在はc群全例脳実質内で側頭葉,頭頂葉に好発,n群は硬膜下が 5 例(p < 0.01)で,全体で膿瘍複数個は 5 例.外科ドレナージを診断確定後,平均6.4日で施行.起炎菌は両群とも連鎖球菌属が最多13例,嫌気性菌との混合感染を 4 例,不明は 2 例.4 例を除き初期抗菌薬はカルバペネム系薬を用いた.抗菌薬使用期間およびCRP陰性化に要した日数はc群で有意に短く(c群33日 < n群55日 p = 0.05,c群5.5日 < n群18日 p = 0.02),逆にステロイド使用頻度は高かった(p < 0.02).急性期死亡 1 例と遠隔期再発 2 例はc群のみであり,神経学的後遺症はc群 2 例,n群 3 例に認められた.【結語】チアノーゼ性心疾患に伴った脳膿瘍は,非心疾患群とは臨床症状,膿瘍の局在が異なっていた.初発症状は発熱または頭痛のみの場合が多く,またCRPは低値であり,診断上注意が必要である.また罹患前から,患者,家族への十分な説明も,早期診断のために重要であると思われた.

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