C-II-19
心房中隔欠損症に若年期から肺高血圧症を合併した 9 症例(ASD + IPAH)の臨床像と治療戦略
慶應義塾大学小児科1),東邦大学大森病院小児科2),国立循環器病センター小児科3)
福島裕之1),中山智孝2),山田 修3),玉目琢也1),古道一樹1),林 拓也1),前田 潤1),山岸敬幸1)

【はじめに】心房中隔欠損症(ASD)の多くは小児期には無症状であるが,若年から肺高血圧(PH)を認め,運動耐容能低下など,特発性肺動脈性肺高血圧症(IPAH)の臨床症状を呈する症例を経験することがある.しかし,その症例数は少なく,臨床像や自然歴の詳細は不明であり,治療方針にしばしば苦慮する.本研究では,ASDに若年からPHを合併する症例(ASD + IPAH)を集積し,その臨床像と治療の現状について検討した.【症例】6 施設の協力により,9 例(男 1,女 8)が集積された.調査時年齢 2~34(19)歳.PH診断年齢 2~30(8)歳.ASD径12~21(20)mm.WHO機能分類 1 度 1 例,2 度 4 例,3 度 4 例.動脈血酸素飽和度65~98(93)%.BNP値32~504(69)pg/ml.肺動脈平均圧38~95(56)mmHg.肺小動脈抵抗4.7~33.0(17.3)U・m2.肺体血流比0.38~1.85(1.29).肺血管治療薬:エポプロステノール(EPO)単独 2 例,ボセンタン(BOS)単独 2 例,EPO + BOS 2 例,BOS + ベラプロスト 2 例,EPO + BOS + シルデナフィル 1 例.EPO使用後にASDカテーテル閉鎖 1 例,ASD未閉鎖 8 例.肺移植待機 4 例.〔()内は中央値〕【まとめ】ASD + IPAHでは,臨床症状は軽症から重症まで多様であり,血行動態はASDを介する左右短絡による肺血流増加例から右左短絡による肺血流減少例まで認められ,診断年齢やASDの径との関連性はなかった.全例にPHに対する治療薬が投与されていたが,薬剤の選択は症例ごとに異なっていた.ASD閉鎖の適応についても一定の基準はなく,個々の症例で検討されていたが,1 例だけが閉鎖可能だった.一方,約半数が肺移植の適応と診断され,ASD + IPAHの予後・治療成績は不良と考えられた.今後さらに症例を集積し,治療戦略を確立する必要がある.【付記】症例集積にご協力いただいた,東北大学内科・佐久間聖仁先生,慶應義塾大学内科・佐藤徹先生,岡山大学内科・草野研吾先生,福家聡一郎先生,岡山医療センター内科・松原広己先生に深謝致します.

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