P-II-2
組織ドプラ法による胎児両心室挙動の検討
秋田大学小児科
田村真通,岡崎三枝子,島田俊亮,小山田遵

【目的】胎児期の右室および左室機能の発達様式についてはいまだ不明な点も多い.そこで組織ドプラ法を用いて胎児期の右室および左室挙動変化を検討した.【対象・方法】有意の心奇形,心不全徴候のない胎児20例に30回の胎児心エコー検査を行った.四腔断面像からサンプルボリュームを僧帽弁輪部(MVa)および三尖弁輪部(TVa)におき,拡張早期(MV-E,TV-E),心房収縮期(MV-A,TV-A)および心室収縮期(MV-S,TV-S)の組織ドプラ波形から最大流速値を計測した.またTei index(MV-Tei,TV-Tei)を求めた.MVaおよびTVaのサンプルボリュームがドプラビームと直線上に重なるように工夫し角度補正は行わなかった.【結果】検査時在胎週数は32.1 ± 4.3週であった.各測定値の平均 ± SDは,MV-E:5.5 ± 1.1cm/s,TV-E:6.4 ± 2.1cm/s,MV-A:7.3 ± 2.2cm/s,TV-A:8.9 ± 2.8cm/s,MV-S:5.4 ± 1.3cm/s,TV-S:5.5 ± 1.3cm/s,MV-Tei:0.55 ± 0.09,TV-Tei:0.51 ± 0.12であった.在胎週数との関連では,MV-E(R = 0.68),TV-E(R = 0.57),MV-S(R = 0.62),TV-S(R = 0.56)において正の相関を認めた.しかし左室と右室との関連から検討した場合,MV-SとTV-Sの間でだけ正の相関が認められた(y = 0.50x + 2.77,R = 0.53).【考案】心室収縮期にあたるS波でのみ左室と右室に関連性が認められた.MV-SおよびTV-Sがともに在胎週数と正の相関を示すことから,左右両心室の収縮期挙動は一定の割合を保ったまま,胎児の成長とともに経過すると考えられた.一方,拡張期に相当するパラメータは在胎週数と相関せず,また左右両心室間で関連性が認められなかった.個体差,あるいは前負荷や後負荷に対する左右心室の適応過程に違いがあるのかもしれない.【結語】胎児心機能評価では,個体差,負荷条件を十分考慮する必要がある.

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