P-II-3
正常胎児における心筋収縮能評価―isovolumic accelerationを用いた前方視的検討―
国立循環器病センター小児科1),トロント小児病院循環器科2),マウントサイナイ病院産婦人科3)
新居正基1),Cheung Michael2),Roman Kevin2),Kingdom John3),Redington Andrew2),Jaeggi Edgar2)

【背景】胎児の心筋細胞は心筋構造の未熟性および筋小胞体機能の未熟性等により成人心筋より心筋長に対して収縮力が低いことが知られている.組織ドプラ法,特に等容性収縮期における収縮スパイク加速度(isovolumic acceleration:以下IVA)は前・後負荷の影響を受けにくい心筋収縮能の指標として知られており,胎児における本指標の変化は心筋の成熟度を反映すると考えられる.【目的】正常胎児における心筋収縮能の変化をIVAを用いて検討する.【方法】正常妊娠の胎児のうち胎児心エコー検査にて正常と診断された胎児114名(週数:14~42)について前方視的に検討を行った.超音波診断装置はVingMed Vivid-7(GE)を使用した.得られたカラー組織ドプラ情報からoff-lineにて左室自由壁,心室中隔,右室自由壁でのIVAを計測した.連続 3 心拍について計測を行い,平均値を使用した.【結果】右室自由壁においては93%でIVAの計測が可能であった.左室自由壁および中隔においてはそれぞれ48%,28%で計測可能であった.いずれの部位においてもIVAは週数とともに直線的に増加した;右室自由壁:Y = 0.061X-0.59(r = 0.72,p < 0.0001);左室自由壁:Y = 0.045X-0.18(r = 0.52,p < 0.0001);中隔:Y = 0.041X-0.30(r = 0.63,p < 0.0001)(Y = IVA(m/s2),X = 週数).【考察】IVAは週数と共に増加した.IVAが左室よりも右室において良好に検出されるのは心筋線維の構造の違いのみでなく,胎児循環における右室の優位性,または右室心筋と左室心筋での成熟度の違いも反映すると考えられた.

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