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当科で施行した胎児心エコー検査の有用性について
福島県立医科大学小児科1),産婦人科2)
松本歩美1),桃井伸緒1),福田 豊1),三友正紀1),青柳良倫1),細矢光亮1),藤森敬也2),三瓶 稔2),佐藤 章2)

【背景】先天性心疾患における胎児診断は,出生後の治療方針決定のため重要である.しかし,胎児診断された症例の予後はおもに疾患の重症度に依存するため,その有用性については否定的な報告もある.【目的】当科にて胎児診断された症例の転帰,および動脈管依存性心疾患における診断時期とプロスタグランジンE 1 (以下PGE1)使用量の関連を調査し,胎児心エコー検査の有用性について検討した.【方法】1994年から2005年までの12年間に当科で胎児心エコー検査を施行した130症例の予後について,前半 6 年間を前期,後半 6 年間を後期として比較検討した.また,この12年間にPGE1を使用した動脈管依存性心疾患102症例について,胎児診断されていた15症例をA群,出生後24時間以内に診断された58症例をB群,出生後24時間以降に診断された29症例をC群としてPGE1の使用状況を検討した.【結果】胎児心エコー検査を施行された症例は前期44例,後期88例であり,このうち心疾患と診断されたのは前期24例,後期54例であった.胎児診断された症例の生後 1 カ月における生存率は,前期が23%であったのに対し,後期では65%と上昇し,人工妊娠中絶に至った症例は17%から11%に低下した.動脈管依存性心疾患におけるPGE1の平均投与量は,使用開始24時間後のlipo PGE1投与量で検討し,A群が3.4ng/kg/min,B群が4.7ng/kg/min,C群が5.4ng/kg/minであり,A群において有意に少量であった(p < 0.01).【考察】胎児診断された症例の生存率は飛躍的に改善した.これは,近年における先天性心疾患の治療成績向上によるほか,中絶率の低下も寄与していると考えられた.また,胎児診断されていた症例では,PGE1の少量投与で動脈管開存の維持が可能であり,より安定した循環管理を行えることが明らかとなった.

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