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急性期心筋に広汎な石灰化を伴った急性心筋炎の小児例
昭和大学横浜市北部病院1),循環器センター2)
曽我恭司1),上村 茂2),松岡 孝1),中野有也1)

完全房室ブロック,多臓器不全を伴った急性心筋炎の治療早期に,広汎な心筋石灰化を認めたが退院できた症例を経験した.文献上,小児例の報告はなく,特異的な経過につき報告する.【症例】7 歳,男児.第 1 病日,発熱,吐き気,下痢を認め,第 2 病日,顔色蒼白,胸痛を訴え,吐き気が改善しないため,近病院に救急入院となった.輸液を開始したところ徐脈となり,当院に転院となった.入院時心拍不整60/分以下,肝臓 3cm触知,CK 4,734IU/l,CK-MB 196IU/l,AST 11,912IU/l,PTINR 7.43,BUN 70.5mg/dl,Cr 3.4mg/dl,CRP 2.15mg/dl,トロポニンT 19.6ng/ml.CXR:CTR 61%,肺うっ血,ECG:完全房室ブロック,UCG:LVIDd 40.7mm,LVSF 0.24,LVEF 0.56以上より急性心筋炎と診断した.急性循環不全から多臓器不全となり,急性心筋炎に対し免疫グロブリン大量療法,体外式ペーシングを17日間,急性腎不全に対し持続的血液濾過透析を24日間,急性肝不全に対し血漿交換 3 日間を行い,神経学的な後遺症なく軽快した.しかし第13病日の胸部CTにて心筋に広汎な石灰化を認め,その後石灰化は増悪している.退院時所見:CXR CTR 44%,ECG CRBBB,UCG LVIDd 35.5mm,LVSF 0.35,LVEF 0.66と改善し,MIBG心筋シンチでは異常を認めない.【考察】急性心筋炎では種々の程度に心筋の変性・壊死をみる.さらに心筋壊死の強いところに石灰化を認めると考えられる.心筋石灰化がうっ血性心不全の原因となるという報告もあり今後慎重な経過観察が必要と考えられる.新生児・胎児の心筋炎や動物心筋炎モデル,成人の横紋筋融解症に合併する心筋の石灰化は散見されるが,小児期の広汎な石灰化を伴った急性心筋炎の報告はなかったため報告する.

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