P-II-10
Fabry病に対する酵素補充療法の心病変に対する中期効果
東京慈恵会医科大学小児科
藤原優子,寺野和宏,安藤達也,河内貞貴,大橋十也,衛藤義勝

【目的】Fabry病はa-galactosidaseA欠損により,低汗症,四肢痛,腎機能障害,心病変を呈し,心・腎・脳病変は予後を左右する.2004年 4 月より日本でも酵素補充療法(ERT)が可能となった.ERTの心病変に対する中期効果,不良因子について検討した.【方法】α-galactosidaseA(Fabrazyme,Genzyme社)を 2 週間に 1 回投与を20回以上投与したFabry病43例(ERT開始年齢:5~66歳),hemizygote 29例,heterozygote 14例.心エコー・心電図で検討,ベースラインと最終検査での結果を比較した.【結果】ERT開始後,コンプライアンス不良の 2 例が死亡した.不整脈はベースラインで 7 例に異常を認めた.2 例で所見の改善があった.PMT後の 1 例で一部,洞室調律に復した.ERTにかかわらず,AFやLQTS,AVB,CRBBB,SVPC,2 度AVBからCAVBの悪化例があった.ERTに対するアレルギー,高齢,腎不全例が悪化例であった.心電図のLVHは若年,コンプライアンス良好例で 3 例が改善した.悪化の 1 例は高血圧例であった.心電図のST-T変化は 4 例で正常化した.ベースラインでST-T変化がなかったがST-T変化が出現したのは 7 例で,コンプライアンス不良,重症Fabry病,腎不全例であった.高齢ではERTにかかわらず左室心筋肥厚は進行した例もあるが,一部では改善もあった.全例LVEFは維持されていた.MR;MRは 6 例で悪化したが,6 例で改善傾向にあり,特にmoderate MRがmild MRに改善した.ARは 3 例で悪化,heterozygoteの 2 例は改善した.【結論】ERTは心電図,心エコーで改善がある場合があり,進行はある程度予防できる.しかし,アレルギー発症例,コンプライアンス不良例,高齢,腎不全例では所見の悪化がある場合がある.

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