P-II-11
ダウン症における肺動脈絞扼術後の肺血管抵抗
東京大学小児科1),心臓外科2)
小野 博1),賀藤 均1),平田陽一郎1),渋谷和彦1),益澤明広2),土肥善郎2),竹内 功2),村上 新2)

【目的】ダウン症の肺動脈絞扼術後の肺血管抵抗を対照と比較し,影響を与える因子を考察する.【対象】1996年11月から2006年 1 月まで当院で肺動脈絞扼術を施行されたダウン症13例をA群とし,対照としてダウン症以外で,肺動脈絞扼術を施行した28例をB群とした.対象疾患は,心室中隔欠損,房室中隔欠損,両大血管右室起始,大動脈縮窄複合,大動脈離断複合とし,単心室症例などの複雑心奇形は除外した.【方法】心内修復術前の心カテーテル検査の結果を参考にした.絞扼のすれにより,過度に肺血流に左右差が生じた症例は除外した.【結果】平均肺血管抵抗は,A群13例で3.47Um2(1.45~5.40),B群24例で2.53Um2(0.21~5.17)で両群に有意差を認めた(p = 0.03).平均月齢はA群13.2カ月,B群12.8カ月で有意差なし.平均体重はA群6.9kg,B群7.0kgで有意差なし.Nakata indexは平均,A群319mm2/m2,B群382mm2/m2で有意差なし.肺体血流比は平均,A群1.18,B群1.16で有意差なし.肺動脈収縮期圧は平均,A群31.4mmHg,B群28.8mmHgで有意差なし.肺動脈平均圧はA群21.2mmHg,B群18.2mmHgで有意差なし.右室-肺動脈圧較差はA群52.5mmHg,B群65.7mmHgで有意差を認めた(p = 0.01).【考察】ダウン症の肺動脈絞扼術後の肺血管抵抗は対照に比較して高値であり,絞扼部の圧較差は対象に比し小さい.収縮期肺動脈圧,肺動脈平均圧は有意差はないが,ダウン症の方が高値である.このことは,ダウン症例は,肺血管病変があるために,十分な絞扼が行えないこと,または肺血管病変が絞扼後,進行するためと考えられる.肺体血流比はほぼ同値だが,Nakata indexは有意差はないが,ダウン症例の方が小さい.このことは,ダウン症児は肺血管の成長そのものに問題がある可能性を示唆する.

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