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肺高血圧モデルラットのNO産生低下におけるarginase活性の上昇,内因性NOS阻害因子代謝低下の重要性
東京医科歯科大学発達病態小児科1),東京医科歯科大学生体材料工学研究所生体システム制御2)
佐々木章人1),土井庄三郎1),畠井芳穂1),西口康介1),水谷修紀1),東  洋2)

【目的】肺高血圧症でのNOの産生低下の機序には不明の点が多い.最近,arginine-NO合成酵素(NOS)経路によるNO産生にarginine-arginase経路が相互作用を及ぼすことが報告され,また,われわれはモノクロタリン(MCT)誘発肺高血圧モデルラットの肺動脈でNO産生が低下し,内因性NOS阻害物質が上昇していることを報告した.今回,われわれは,NOSばかりでなく,arginase,内因性NOS阻害物質の代謝酵素DDAHといったNO産生低下に関与すると考えられる因子を包括的に検討した.さらに,肺高血圧ラットの病期におけるより早い段階からのこれらの因子の変化を検討し,進行期の変化と比較した.【方法】6 週齢SDラットにMCTを投与し,投与後24日目の肺動脈内皮細胞で,NOS,arginase,およびDDAHの酵素活性を測定した.また,MCT投与10日目,24日目の肺で,eNOSの蛋白発現および,arginase活性を測定した.【結果】MCT群の肺動脈内皮細胞ではコントロール群に比し,以下の結果を得た.(1)NOSの活性およびeNOS蛋白発現の低下.(2)arginase活性の上昇.その酵素活性はNG-hydroxy-L-arginine(NOHA)が抑制.(3)DDAH活性の低下とDDAH1の蛋白発現の低下.また,MCT群の肺ではコントロール群に比し,10日目でeNOS蛋白発現が上昇し,arginase活性が両群で有意差はなかったのに対し,24日目でeNOS蛋白発現が減弱し,arginase活性は上昇していた.【結論】肺高血圧ラットのNO産生低下には,arginase活性の上昇,NOS活性の低下,内因性NOS阻害物質の代謝低下が関与している可能性が示された.また,eNOS蛋白は病態の進行とともに減弱するが,それに伴ってarginaseは増強する可能性が示唆された.

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