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特発性肺動脈性肺高血圧症例におけるTGF-β/BMPシグナル伝達にかかわる遺伝子群の解析
東京女子医科大学国際統合医科学インスティテュート1),先端生命医科学研究所2),循環器小児科3),東邦大学第一小児科4),東京慈恵会医科大学小児科5),東北大学呼吸器外科6)
新谷正樹1, 2),八木寿人1, 2),藤原摩耶3, 4),古谷道子1, 3),今村伸一郎1, 3),上原里程5),星川 康6),中山智孝4),中西敏雄3),佐地 勉4),松岡瑠美子1-3)

【背景】特発性肺動性肺脈高血圧症(IPAH)は,100万人に数人の頻度で認められる予後不良な疾患であり,小児期発症例は全体の約25%を占める.疾患遺伝子としてはBMPの 2 型受容体であるBMPR2遺伝子の変異が同定されている.また,ALK1およびENG遺伝子の変異が肺動脈性肺高血圧症(PAH)を伴う遺伝性出血性毛細血管拡張症(HHT)の患者で報告されている.これら 3 つの遺伝子はいずれもTGF-βsuperfamilyに属し,TGF-β/BMPシグナル伝達にかかわっている.われわれはIPAHの患者を対象に,まずBMPR2,ALK1,ENGの解析を行い,さらに複数のIPAH疾患候補遺伝子の解析を行ったので報告する.【方法】家族性PAH 5 例を含むIPAH患者41例を対象にBMPR2,ALK1,ENGの解析を行った.次にBMPR2,ALK1,ENGの変異を認めなかった患者を対象にSmad1,Smad4,Smad5等複数の遺伝子の解析を行った.【結果】家族性PAH 5 例中全例でBMPR2変異を 2 例(2/5:40%)に,ALK1変異を3例(3/5:60%)に認めた.散発性IPAH36例中 8 例でBMPR2変異を 5 例(5/36:13.9%)に,ALK1変異を 3 例(3/36:8.3%)に認めた.ENGでは変異は認めなかった.BMPR2,ALK1,ENGの変異を認めなかったIPAH 28例を対象としたSmad1,4,5の解析では,現在までにいくつかの多型を認めている.【考察】海外ではHHTでもなくHHTの家族歴もないIPAH患者でのALK1変異は 1 例報告されている.われわれの研究結果はIPAHの発症にALK1が重要な役割を果たしていることを示している.散発性IPAH 36例中28例(77.8%)ではBMPR2,ALK1,ENG変異を認めなかったことから,IPAHの発症にかかわる未発見の疾患遺伝子の存在が推察される.

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