P-II-15
心エコーによる特発性肺動脈性高血圧症の縦断的観察
東邦大学大森病院小児科
嶋田博光,直井和之,池原 聡,高月晋一,中山智孝,松裏裕行,佐地 勉

【目的】特発性肺動脈性高血圧症(IPAH)の重症度と予後判定に有用な心エコー指標について各症例において縦断的に検討した.【対象】1998年から2006年までにエポプロステノール持続静注療法(PGI2)または経口シルデナフィルを開始した 6~18歳の45例(平均:11.1 ± 3.0歳,男:24,女:21).NYHAクラスはII:16,III:20,IV:9.開始治療はPGI2:30例,シルデナフィル:15例.【方法】治療開始前の心エコー所見とNYHAクラスとの比較,CTR,BNP,心カテーテルのmPAP,Rpとの相関,1 年後の心エコー所見との比較を行った.【結果】心エコーによる左室拡張末期径(LVDd),RV Tei index(RVT),LV Tei index(LVT),E/A,三尖弁逆流の圧較差(TRPG)は有意にNYHAクラスと相関した.mPAPとはLVDd(r = -0.54,p = 0.001),RVT(r = 0.63,p < 0.001),TRPG(r = 0.58,p = 0.001)が相関した.RpとはRVT(r = 0.62,p < 0.001),LVDd(r = -0.53,p = 0.003),E/A(r = 0.53,p = 0.001)が相関した.開始時と 1 年後の比較ではLVDd:0.22 ± 0.05→0.25 ± 0.04,LVT:0.53 ± 0.23→0.46 ± 0.19,RVT:0.96 ± 0.42→0.74 ± 0.28,E/A:1.05 ± 0.46→1.36 ± 0.46,TRPG:92.0 ± 24.0→90.1 ± 21.7でRVTのみ有意差を認めた(p < 0.001).死亡,肺移植,心不全悪化による入院をend pointとしてKaplan-Meier法でログランク検定を行ったところ,RVT 0.8以上が0.8未満より低い生存率を示した(観察期間 1~97カ月でp = 0.049).【結論】IPAHにおいてRVTは心カテーテル所見と高い相関を認め,各症例の縦断的検討においても治療反応性や予後判定に有用と考えられた.

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