P-II-16
NOxの低値,endothelin-1の高値を認めた先天性門脈大循環シャントと静脈管開存の症例
千葉県こども病院循環器科1),代謝科2)
菅本健司1),犬塚 亮1),山澤弘州1),建部俊介1),中島弘道1),村山 圭2),長坂博範2)

先天性門脈大循環シャントと静脈管開存はともに門脈血流が直接大循環に流入し肺高血圧のほか,高アンモニア血症などの原因となり得る病態である.成人領域では門脈肺高血圧の成因として肝代謝をバイパスした膵酵素などの血管毒性物質やendothelin-1(以下ET-1)の関与が考えられ,ET受容体antagonistの投与が試みられている.今回,先天性門脈大循環シャントと静脈管開存の症例を各 1 例ずつ経験し,これらで血中NO代謝産物(以下NOx)およびET-1を測定した.【症例 1】先天性門脈大循環シャント:生後 1 カ月時に発熱に伴い多呼吸と心拡大で入院.心エコー上70~80%PH,RV拡大.腹部エコー上,肝外門脈大循環シャントを認めた.入院後のNOx = 10.9μmol/l,ET-1 = 15.9pg/ml.保存的治療で症状は軽快,シャントも縮小傾向でPHも自然軽快したが,生後12カ月時にもNOx = 15.7μmol/l,ET-1 = 8.9pg/mlと異常値を示している.【症例 2】静脈管開存:生後 2 日で哺乳不良で入院.入院時,心エコーにてPDAとASD,腹部エコーにて静脈管開存を認めた.静脈管は生後10日まで開存.ASDによる右室拡大を認めPHが遷延,心不全症状もあるため外科治療を考慮している.生後 4 日目のNOx = 13.5μmol/l,ET-1 = 13.0pg/ml.【まとめ】門脈大循環シャントでのNOx,ET-1を測定した.これらは既報の新生児の正常値と比較してNOx低値,ET-1高値の結果だった.門脈血の肝臓への流入が減少することでアンモニアからのアルギニン産生の低下,さらにNOの産生低下が考えられる.新生児での門脈大循環シャントとNOx,ET-1の関係についての報告は見当たらず,成人での門脈肺高血圧の場合と同様にこれらの因子が関与している可能性があるが詳細は不明である.

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