P-II-17
若年発症した深部静脈血栓に合併した血栓塞栓性肺高血圧症の 1 例
東邦大学大森病院小児科
直井和之,池原 聡,嶋田博光,中山智孝,松裏裕行,佐地 勉

【症例】13歳男児,幼児期から+2SD以上の肥満で,体重78kg(BMI = 27).肺高血圧症(PH)の家族歴なし.膝関節の拘縮に対し,8 歳および 9 歳時に膝屈筋群延長術の手術歴があるが,これまで呼吸困難を自覚したことはなかった.2006年 4 月,肺炎に罹患し 1 週間入院加療を受けた.肺炎軽快後も歩行時の呼吸困難や冷汗を認めるため,前医を受診.心エコー上,推定右室圧70mmHgと上昇を認めた.酸素吸入,ワルファリン,ベラプロスト内服を開始され,同年 6 月に精査加療目的で当院紹介.転院時の心エコーでは推定右室圧40mmHgと軽快していた.肺血流シンチグラフィにて左右の区域性血流欠損像を認め,造影胸部CT,肺動脈造影で左下葉枝の完全閉塞を認め,肺血栓塞栓症と診断した.また,下肢静脈エコーにて手術歴のある左大腿部の深部静脈(大腿~膝窩静脈移行部)に著しい拡張と同部位での血流うっ滞所見を認めた.高脂血症や耐糖能異常は認められなかった.以上の結果から,深部静脈血栓(DVT)による肺血栓塞栓症(PTE)が強く疑われた.心臓カテーテル検査 2 日後から再び呼吸困難や体動時の失神が出現した.心拡大およびDダイマーが3.2→5.2μg/mlと上昇しており,PTEの急性増悪と診断した.ただちにワルファリン増量,ヘパリン持続静注,カテコラミン,シルデナフィル内服を開始したところ,約 1 週間で軽快した.退院後はPT-INR2.5,Dダイマー低値を目標にワルファリン投与を継続した.3 カ月後の心臓カテーテルでは平均肺動脈圧は27mmHg,肺動脈左下葉枝の閉塞は著明に改善した.前述の治療に肥満に対する食事療法,夜間HOTを追加した.6 カ月経過したが再発なく経過良好である.【結語】若年発症の極めてまれなPTEの症例を経験した.本症例において整形外科手技に関連した下肢静脈病変の存在,肥満,全身感染症,長期臥床がDVTの危険因子と考えられた.

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