P-II-18
重症肺血管病変を伴う心疾患の肺病理所見とIPVD(index of pulmonary vascular disease)値の臨床的検討
あいち小児保健医療総合センター心臓外科1),循環器科2)
鵜飼知彦1),佐々木滋1),角三和子1),足達信子2),沼口 敦2),福見大地2),安田東始哲2),長嶋正實2),前田正信1)

【目的】重症肺血管病変を有する先天性心疾患に対しては根治手術適応決定の手段として肺生検診断が行われている.肺血管病変発生の病因論も確立されてきているが,いまだ判断の難しい症例も認められる.今回われわれは肺血管病変を有する心疾患症例の肺生検から得られた病理組織所見,IPVD(index of pulmonary vascular disease)値と心臓カテーテル検査値,臨床経過を比較検討した.【対象】症例は2003年 8 月から2006年12月までの 3 年 5 カ月間に施行した肺生検20例.生検時年齢は,生後 9 日~31歳.生検時期は,根治術時 6 例,肺動脈絞扼術時 7 例,その他の姑息術時 2 例,生検のみ 1 例,剖検時 4 例.対象疾患はVSD 6 例,ASD 1 例,PDA 1 例,cAVSD 3 例,TAPVC 3 例,共通肺静脈閉鎖症(CPVA)1 例,弁膜症 3 例,多脾症 1 例,HLHS 1 例(うちダウン症 6 例).【結果】VSD 6 症例(ダウン症 3 例)ではIPVD値は1.0~1.4,術後臨床経過区分(以後術後区分)はA:4 例,B:2 例.根治術死,病院死なし.AVSD 3 症例(ダウン症 2 例)ではIPVD値は1.0~1.2,術後区分はA:2 例,B:1 例.根治術死,病院死なし.TAPVCとCPVA 4 症例(うち剖検時 3 例)ではIPVD値は 3 例が1.0~1.1,1 例は肺小動脈なし,術後区分はD:2 例,E:2 例.高度PVO,呼吸不全で全例病院死.弁膜症 3 症例のうち31歳のAS,PH症例は術後区分がDで,手術せず 4 カ月後に死亡.1 歳のMS症例はIPVD値が1.0,術後区分はBで弁置換術後,遠隔死なし.PDA症例は 4 カ月の非ダウン症,IPPHNでIPVD値が1.0,肺小動脈中膜の致死性肥厚を認め術後区分はD.根治術後 2 カ月で入院中.【まとめ】肺生検の所見と臨床経過はおおむね一致していた.生後早期に手術適応の判断を迫られる高度PVOを伴うTAPVCやCPVA症例には肺動脈や肺胞の低形成の症例もあり,さらなる検討が必要である.

閉じる