P-II-21
Moriらの川崎病後冠動脈瘤発生予測式についての検討
近畿大学奈良病院小児科
鎌田航也,北村則子,石原温子,三崎泰志,吉林宗夫

【背景】γグロブリン大量静注(IVIG)不応例に対する治療法としてinfliximabや血漿交換などの新しい代替治療法の有用性が報告されている.MoriらはIVIG後の白血球数(WBC),好中球数(Neut),CRP値の変化率により冠動脈瘤(CAL)の発生が予測可能でこの値がIVIG不応例における追加代替治療の必要性を示唆する指標になると報告している(J Pediatr 2000;137:177).【目的】Moriらの方法によりCAL発生を予測し得るか否かを当院での症例を基に検討する.【方法】対象は2005~2006年の 2 年間に入院した急性川崎病60例(男37,女23,年齢 5 カ月~25歳).全例2g/kg/day × 1 日のIVIGを行った.IVIG前後のWBC,Neut,CRPを測定し変化率(IVIG前値-IVIG後値/IVIG前値)を算出した.心エコー検査によりCALの有無を評価し 1 カ月以上CALが持続したものをCAL(+)(A群),その他をCAL(-)(B群)とした.【結果】60人中A群は10例(16.6%).A群 vs B群(mean ± SD)は,投与前WBC 11,932 ± 3,497 vs 12,652 ± 3,975(NS),投与後WBC 6,990 ± 5,211 vs 6,652 ± 2,548(NS),投与前Neut 9,466 ± 3,390 vs 8,606 ± 3,495(NS),投与後Neut 4,257 ± 4,229 vs 2,974 ± 2,274(NS),投与前CRP 10.3 ± 3.9 vs 5.9 ± 3.6(p = 0.0009),投与後CRP 6.0 ± 3.2 vs 3.2 ± 2.4(p = 0.0025),投与前後WBC変化率-0.41 ± 0.32 vs -0.45 ± 0.18(NS),Neut変化率 -0.53 ± 0.35 vs -0.66 ± 0.19(NS),CRP変化率-0.41 ± 0.25 vs -0.45 ± 0.25(NS)であった.投与前と後のCRPのみが両群間で有意差を認めた.IVIG後にWBC,Neut,CRPのいずれかの項目が増加したのは 2 例(A群 1,B群 1)であった.【結語】WBC,Neut,CRPのIVIG前後での変化率はCAL(+)群とCAL(-)群との間で有意差はなく変化率によるCAL発生予測は不可能であった.これはMoriらの成績と異なる結果であったが,原因としてIVIG投与量の相違(Moriらの検討では投与量が一定ではなく今回は全例2g/kg × 1日という一定投与量)が考えられる.今後さらに多数例での検討が必要であると考える.

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