P-II-23
γグロブリン大量療法不応症例におけるT細胞活性化の検討
和歌山県立医科大学小児科1),紀南病院小児科2)
鈴木啓之1),末永智浩1),武内 崇1),渋田昌一1),南 孝臣2),吉川徳茂1)

【背景】川崎病(以下KD)の治療においてγグロブリン大量療法(以下IVIG)に不応である場合,冠動脈病変(以下CAL)を生じる可能性が高いが,このような症例に対する確実な治療法はない.近年,T細胞を抑制して免疫抑制作用をもつシクロスポリンがこの不応例に有効との報告が散見される.【目的】2006年の本学会で,シクロスポリンが有効と思われた 2 例の不応例を報告したが,今回,不応例のT細胞活性化について検討する.【対象と方法】対象は2004年 1 月から2006年12月までに川崎病診断基準を満たして当科に入院した患児15例である.この15例をIVIG療法に対する反応によって 3 つの群に分けた.A群は,初期IVIG療法(2g/kg/日)にも追加IVIG(1g/kg/日)にも不応であった 5 例,B群は初期IVIG療法に不応であったが追加IVIG療法によって解熱した 5 例である.C群は初期IVIG療法によって解熱した 5 例である.A群とB群症例では,初期IVIG療法前と追加IVIG前の血清,C群では初期IVIG療法前後の血清を用いて,sIL-2レセプター(sIL-2R),IL-6,TNF-aをELISA法で測定した.統計学的検討はKruskal-Wallis検定を用いた.【結果】A~C群の各群の年齢分布は,11カ月~6 歳10カ月,11カ月~4 歳 3 カ月,4 カ月~1 歳 7 カ月,また男女比は2:3,4:1,4:1であった.今回検討した 3 種類のサイトカインで 3 群間で有意差を認めたのは,sIL-2RとIL-6であり,いずれも初期IVIG後にC群に比してA群,B群が有意に高値であった(p < 0.05).【考案】IVIG不応例では初期IVIG療法後に発熱が持続し,CRPの低下が得られない.今回の結果からCRPに関連するとされるIL-6に差がみられ,さらにT細胞活性化の指標とされるsIL-2RにもIVIG後に不応例と反応例に差を認めたことから,不応症例に対してT細胞抑制作用をもつシクロスポリンが有効である可能性を示唆している.

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