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経過中に有意な狭窄性病変を認めなかった巨大冠動脈瘤の予後
日本医科大学小児科
阿部正徳,深澤隆治,勝部康弘,上砂光裕,大久保隆志,池上 英,渡邉美紀,初鹿野見春,鈴木伸子,渡邉 誠,小川俊一

【目的】経過中に有意な狭窄性病変を認めなかった巨大冠動脈瘤の予後につき後方視的に検討した.【方法】川崎病発症より巨大冠動脈瘤を有し,かつ経過中に瘤の前後に有意な狭窄性病変を有さない24例(男性18例,女性 6 例),32冠動脈枝について,その予後を検討した.方法は,全例に2-D echo,CAGを施行し,可能なかぎりflow wireおよびIVUSによる検討を行った.さらに,DOB負荷心筋シンチにより心筋虚血の有無を検討した.【結果】32枝中,12枝は経過中に瘤は徐々に縮小化し,巨大瘤の範疇より脱した.それらの瘤縮小前後での瘤内の平均最大血流速度(APV)は全例15cm/sec以上(前:19 ± 2.6cm/sec,後:21.2 ± 1.7cm/sec),冠血流予備能(CFR)も全例2.0以上(前:2.3 ± 0.3,後:2.6 ± 0.7)と正常範囲内でありflow patternは瘤縮小前後とも拍動パターンであった.さらにIVUSにて有意な血栓も認められず,他枝病変のための 1 例を除きwarfarinも使用していない.一方,7 枝には経過中に有意な狭窄性病変がないにもかかわらず心筋虚血が認められ,CABGを施行した.なお,CABG後の経過は良好である.また,4 例にCABG施行時に縫縮術を施行.1 例を除いて術後の経過は良好である.残りの 9 枝はいまだ巨大瘤の範疇にあるが,3 枝はAPVが15cm/sec以上,CFRは2.0以上で拍動パターンであり,warfarinは使用していない.6 枝はAPV 6~13cm/sec,CFR 1.0~1.7,全例乱流パターンであり現在warfarinを使用中である.【結論】巨大冠動脈瘤でも経過によりその予後に大きな差違が認められた.唯単に,形態学的に分類するのではなく,瘤内の血行動態を把握することによりある程度予後を推測することが可能である.

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