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ステロイドパルス療法を施行したγグロブリン不応川崎病患者のサイトカインの推移
信州大学小児医学講座1),国立病院機構松本病院小児科2)
松崎 聡1),花村真由1),北村真友1),元木倫子1),清水 隆1),岩崎 康2),小池健一1)

【背景】川崎病の血管炎は,おもにマクロファージが産生する炎症性サイトカインの高サイトカイン血症が基盤にあると考えられている.大量γグロブリン療法,血漿交換は高サイトカイン血症を改善することは報告されている.ステロイドパルス療法の有効例は報告されているが,その機序が炎症性サイトカインの抑制によるものかを検討した報告は少ない.【対象・方法】対象は大量γグロブリン療法不応例でステロイドパルス療法を施行した川崎病患者 3 例と,大量γグロブリン療法のみで治癒した川崎病患者 7 例.ステロイドパルス療法は第12病日までに行い,後療法として1~2mg/kg/dayのプレドニンを投与した.ステロイドパルス療法を施行した 3 症例は速やかに解熱したが,2 例がリバウンドを起こし,1 例が左右の冠動脈に5~6mmの瘤を形成した.大量γグロブリン療法のみ施行された症例では冠動脈合併症は起こしていない.凍結保存してあった血清を用い,おもにマクロファージが産生するサイトカイン(IL-6,IL-8),マクロファージや血管内皮細胞が産生しTh1ヘルパーT細胞に作用して細胞性免疫を増強するサイトカイン(IL-1β,IL-12,TNFα),Th2ヘルパーT細胞が産生しマクロファージの活性を抑制するサイトカイン(IL-10)を測定した.【結果】(1)ステロイドパルス施行症例では,複数のサイトカインが上昇していたのに対し,大量γグロブリン療法のみ治癒した症例では,IL-6,IL-8が軽度上昇していた例が多かった.(2)ステロイドパルスを施行した症例は最終的にはすべてのサイトカインが低下した.(3)ステロイドパルス施行症例の特徴としてIL-10が上昇しており,冠動脈瘤を形成した症例は高値であった.【結論】ステロイドパルス療法は,川崎病において炎症性サイトカインを抑制した.冠動脈瘤を形成した症例はサイトカインの抑制効果が少なかった.

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