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経過観察中に短絡量が増加し,複数回のカテーテル検査を行った二次孔欠損型心房中隔欠損症の経時的変化についての後方視的検討
金沢大学小児科
中山祐子,斉藤剛克,石崎顕子,太田邦雄,小泉晶一

【背景】心房中隔欠損症(以下ASD)の閉鎖術の適応は,一般的に肺体血流比(以下Qp/Qs)が1.5以上の症例とされているが,当科では適応基準を満たす症例でも,易感染性の有無・年齢・胸郭変形の有無などを考慮したうえで,カテーテル閉鎖治療待期する方針をとっている.このような症例のうち,2 回以上の心臓カテーテル検査(以下,心カテ)を行った症例について後方視的に検討した.【対象】1985年 1 月~2006年12月に当科において心カテを行ったASD患者137名のうち,右室容量負荷の増大や就学前・成人前の再評価などの目的で 2 回以上の心カテを行ったASD患者13名について,Qp/Qs,RVEDVの変化につき検討した.また同症例の心臓超音波検査での欠損孔の大きさについても経時的に変化を追った.【結果】1 回目の心カテ時の平均年齢:6 歳 8 カ月(6 カ月~15歳 8 カ月),2 回目心カテまでの平均間隔:81カ月(36~154カ月).2 回目の心カテでは,RVEDVの対正常比が有意に増大した(1 回目:138 ± 26.9%,2 回目:165 ± 34.1%,p < 0.005,n = 11).また,Qp/Qsも有意に増加し(1 回目:1.80 ± 0.50,2 回目:2.06 ± 0.37,p < 0.05,n = 13),1 回目の心カテでQp/Qs < 1.5であった 3 例全例がQp/Qs > 1.5となり,閉鎖術の適応を満たした.心臓超音波検査においては 1 例で欠損孔の拡大傾向が認められたが,一定した傾向は今回の検討では得られなかった.【結論】当初閉鎖術の適応とされないような患者のなかにも,経過観察中に短絡量が増加し閉鎖術の適応となり得る患者が含まれていることが示唆され,慎重かつ定期的な経過観察が必要と思われた.

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