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小児循環器領域における64列マルチスライスCTの臨床応用とその有用性
九州厚生年金病院小児科1),放射線室2),放射線科3)
森鼻栄治1),永田 弾1),山村健一郎1),宗内 淳1),岸本小百合1),渡辺まみ江1),大野拓郎1),西坂秀彦2),佃 正明3),城尾邦隆1)

【背景】新しい心臓血管疾患画像診断法としてマルチスライスCT(MDCT)が開発され威力を発揮しているが,小児領域への応用には体動等の障害が多く工夫が必要である.【対象と方法】64列MDCT(東芝Aquilion 64)導入後の124例中撮影方法が明記された91例で,撮影時年齢は平均7.4歳(日齢20~22歳),撮影目的部位は肺動脈(PA)36例,冠動脈(CA)24例,大動脈(Ao)21例,気管/気管支(T/B)14例,人工血管13例(conduit 10例,shunt 3 例),肺静脈(PV)8 例,主要体肺側副動脈(MAPCA)6 例,動脈管(PDA)3 例,Fontan術後のVV collateral(VV-c)3 例であった.部位別に目的達成度,カテーテル検査とのかかわりについて検討した.【結果 1】目標のCT値を上げるため撮影部位に応じた場所から太い静脈ルートを確保し注入速度を上げた.造影剤投与量軽減のため生理食塩水フラッシュを行い,透視下にCT値を監視し適切なタイミングで撮影を開始するReal Prep法を用いて撮像し三次元構築を行った.なおCAでは心電図同期および体動抑制が必要で,可能なかぎりβ遮断薬・硝酸薬前投与と撮影中息止めを行った.複合部位の場合は必要に応じ 1 回の造影剤投与で 2 回撮影を行った.【結果 2】部位別目的達成例数はAo・PA・MAPCA・PDA・T/B:80/80,PV:7/8,人工血管:conduit;10/10,shunt;2/3でほぼ満足できる結果が得られたが,VV-cの検出率は約50%と低めであった.CA起始部の描出は10/11であったが,末梢までの正確な描出は心拍数変動や息止め不良により困難であった.【考察】依頼医師と診療放射線技師との事前の綿密な協議により,患者に対して最小限の負担で,目的に応じた高精度の画像が得られるようになった.またMAPCAや異常側副血管に関する事前の情報収集により,カテーテル検査での透視時間短縮・造影剤投与量軽減・治療精度向上に貢献した.

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