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心エコー診断の遠隔支援システムは新生児・乳児期先天性心疾患の予後を改善し得るか?
北海道立小児総合保健センター循環器科
富田 英,畠山欣也,早田 航

【目的】新生児・乳児期早期の先天性心疾患では早期診断が予後を決定する可能性がある.当科に紹介された先天性心疾患の診断プロセス・精度を後方視的に検討し,心エコー診断の遠隔支援システムが導入された際に見込まれる効果をsimulationすること.【対象】生後 6 カ月未満に先天性心疾患を疑われて当科を紹介されたか,当科受診後に初めて先天性心疾患が明らかとなった110例.【方法】紹介元での心エコー検査の有無とその診断精度,および診断の違いが治療方針や予後に与えた影響について後方視的に検討.【結果】(1)受診時年齢は中央値20日.(2)紹介元は一般小児科医41例,新生児科医24例,小児循環器医40例,産科医 5 例.(3)紹介元で心エコーが行われていたのは80例.(4)最終診断は心室中隔欠損33例,単心室,心房中隔欠損,肺動脈狭窄,各 9 例,ファロー四徴 7 例,動脈管開存,総肺静脈還流異常,大動脈縮窄複合,異常なし,各 4 例,生理的肺動脈分岐部狭窄,単純型大動脈縮窄,各 3 例,その他21例.(5)紹介元の診断が正確だったのが65例,誤りは 8 例.一部は合致していたがover diagnosisが 9 例,under diagnosisが 2 例.受診後に初めて診断されたか,診断不明であったのが26例.(6)診断確定後に治療方針不変が74例,診断確定により初めて治療方針が決定したか,治療方針が変更されたのは36例.(7)小児循環器医が紹介した40例は全例正しい診断が得られており,治療方針の変更はなし.(8)小児循環器医以外が紹介した70例中,心エコーが行われていたのは41例で,うち診断が正確だったのが25例,誤りは 7 例.一部は合致していたがover diagnosisが 5 例,under diagnosisが 2 例.診断不明であったのが 2 例.診断確定により初めて治療方針が決定したか,治療方針が変更されたのは13例.【考察と結語】心エコー診断の遠隔支援システム導入により,心エコー後に紹介される患者の32%で受診前に正しい治療方針を決定できる可能性がある.

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