P-II-36
Multidetector-row CT(MDCT)を用いたexpanded polytetrafluoroethylene(ePTFE)グラフトの石灰化の診断と評価
徳島大学小児医学分野1),循環機能制御外科学分野2)
早淵康信1),森 一博1),渡辺典子1),来島敦史2),北市 隆2),北川哲也2),香美祥二1)

【背景】成人領域において,MDCTは血管内腔の形態診断のみでなく,プラークの存在やその性状,血管壁の評価や石灰化の有無などの診断に応用されている.一方,小児科領域において,ePTFE補填物は,先天性心疾患手術において,人工血管,欠損孔閉鎖,導管などに使用されることが多いが,ePTFE上に内膜異常肥厚や平滑筋の増殖,石灰化が認められる症例があり,耐久性の低下やグラフト内狭窄,血栓形成などの問題を惹起する可能性がある.このような病的状態をMDCTで把握することが可能であれば,有用であると考えた.【目的】MDCTによって,先天性心疾患術後患児のePTFEの石灰化の診断ができるか否か検討した.また,手術術式や補填部位などで診断の精度や石灰化の進行に違いがあるか否かを検討した.【方法】対象は,ePTFEを補填された先天性心疾患術後患児47例,補填されたePTFEグラフト76部位である.これらのグラフトを,(1)心室中隔欠損閉鎖パッチ(VSD patch)29部位,(2)右室流出路再建部(RVOT)32部位,(3)フォンタン術心房中隔パッチ(atrial septal patch)8 部位,(4)TCPC extracardiac conduit(TCPC conduit)7 部位に分類し,Toshiba Aquilion 16を用いて検討した.なお,これらの症例のうち 4 例でMDCT撮影後,再手術を施行し,MDCT所見と組織学的に比較検討ができた.【結果】MDCTでePTFEの石灰化が示唆された症例では,組織学的にも石灰化,骨化,線維芽細胞の増殖など一致した所見が認められた.VSD patch(114 ± 61HU),atrial septal patch(163 ± 161HU)に比し,RVOT(243 ± 132HU),TCPC conduit(230 ± 29HU)では,CT値が有意に高値であり(p < 0.05),石灰化率も高かった.経年的観察により石灰化の進行を認めた症例もあった.【結語】MDCTは,ePTFEの石灰化の診断に有用であり,術後経過および長期的予後(弁の耐久性・狭窄・血栓発生など)の予測に応用可能であることが示唆された.

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