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肺高血圧症を伴った新生児VSD術前後の心収縮能,エネルギー効率
九州大学心臓血管外科1),小児科2)
田ノ上禎久1),山脇かおり2),小林真理子1),深江宏治1),江藤政尚1),徳永滋彦1),中島淳博1),金谷能明2),宗内 淳2),富田幸裕1),富永隆治1)

【背景】肺高血圧症を伴った新生児VSDに対し,開心術よりVSDを閉鎖することは一般的な治療であるが,その術前後の心収縮能,エネルギー効率を検討した報告は少ない.【目的】今回,VSD閉鎖術前後の心収縮能,エネルギー効率の変化を心臓カテーテル検査から検討したので報告する.【方法】2004年~2006年の 3 年間,本院で,閉鎖術を施行された肺高血圧症を伴った新生児VSD 17症例のうち,肝機能障害のため術後の心臓カテーテル検査を施行できなかった 2 症例を除く,15症例に対し,術前,術後の心収縮能,エネルギー効率の変化を心臓カテーテル検査から検討した.体心室駆出率(EF),心収縮能の指標である心室収縮末期最大弾性率(Ees),後負荷の指標である実効動脈エラスタンス(Ea),エネルギー効率の指標である心室-動脈整合条件(Ea/Ees)と心仕事量/収縮期圧容積面積(SW/PVA)を算出した.Eesは体血圧の平均値を体心室収縮期(最小)容積で除して近似し,Eaは左心室圧の最大値を拡張期(最大値)と収縮期(最小値)の左心室容積の差で除して近似した.SW/PVAは理論式;1/(1 + 0.5Ea/Ees)にて算出した.左心室容積は体表面積にて補正した.【結果】おのおの術前と術後の計測値を平均値 ± 標準偏差で示す.EF(%):67.8 ± 4.2と58.9 ± 7.5,Ees(mmHg/ml/m2):2.43 ± 0.83と3.22 ± 0.72,Ea(mmHg/ml/m2):1.42 ± 0.37と3.00 ± 0.74,Ea/Ees:0.61 ± 0.15と0.96 ± 0.29,SW/PVA(%):76.9 ± 4.0と68.1 ± 6.1.いずれもp < 0.001と有意差を認めた.VSD閉鎖術後,心収縮能は改善したが,後負荷が増大し,結果としてエネルギー効率が悪化した.【結論】肺高血圧症を伴った新生児VSD症例において,術後,心収縮能は改善するが,エネルギー効率が悪化していた.VSD閉鎖術後,後負荷を軽減する治療が肝要であることが示唆された.

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