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進行性筋ジストロフィ(DMD)の左室心筋のねじれ―乳頭筋レベルでの検討―
国立病院機構徳島病院小児科1),徳島大学小児医学分野2),徳島市民病院小児科3)
宮崎達志1),多田羅勝義1),森 一博2),早渕康信2),香美祥二2),井上美紀3)

【背景・目的】DMDでは左室短軸断面で異常な回転運動がしばしば観察される.本研究は,健常者の乳頭筋レベルでの心筋のねじれの正常値を明らかにするとともに,DMDでの特徴を明らかにした.【対象】DMD 17名(年齢15.2 ± 3.3歳,SF27.0 ± 7.3%),年齢をマッチさせた健常者22名【方法】日立EUB6500を用い,左室短軸乳頭筋レベルで回転角度(4 部位の平均値)と,その 1 次微分である回転速度を算出した.さらに,24時間心電図による心臓自律神経機能との関連を検討した.【結果】(1)健常者とDMDとも,収縮期は反時計回転(2.6 ± 1.5 vs 3.5 ± 1.7度),拡張期は時計回転を認め(2.6 ± 1.6 vs 2.9 ± 1.9度),両群で有意差を認めなかったが,総回転角はDMDの方が大きかった(5.2 ± 1.3 vs 7.3 ± 1.4度/秒,p < 0.05).(2)収縮期反時計回転の最大速度はDMDで大であった(-16.3 ± 8.5 vs -30.3 ± 15.8度/秒,p < 0.005).(3)拡張期時計回転の最大速度には有意差はなかったが,反時計回転の最大速度はDMDが大であった(-16.0 ± 8.0 vs -25. 7 ± 13.2度/秒,p < 0.05).(4)拡張期開始から反時計最大速度に達するまでの時間はDMDで長かった.(5)左室の部位別回転角は両群ともに下壁がほかの部位より大きかったがDMDでは後壁が健常者と比べて小さい傾向にあった.(6)心臓自律神経機能との関連では,副交感神経機能(%RR50)が低下している例で総回転角が大きい傾向にあった(r = 0.7,p < 0.05).【考察】DMDでは,乳頭筋レベルの総回転角および回転速度が増大していることが判明した.DMDでは心機能低下を回転運動の増大で代償している可能性が考えられ,相対的な交感神経機能亢進がその機序の一つであると推察された.

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