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心収縮時の「左室心筋のねじれ」は,どの部位でも均一か?―tissue tracking法による検討―
国立病院機構徳島病院小児科1),徳島大学小児医学分野2),徳島市民病院小児科3)
宮崎達志1),多田羅勝義1),森 一博2),早渕康信2),香美祥二2),井上美紀3)

【背景・目的】最近の心エコー図の進歩により,心臓は収縮時に「手ぬぐいを絞るようにねじれる」ことが観察可能となった.しかし,左室心筋の「部位によるねじれに差異があるか?」に関しては不明である.本研究はtissue tracking法を用いて,健常者の心筋局所のねじれの差異を明らかにした.【方法】健常小児40名(9.9 ± 4.6歳)を対象に,日立EUB6500を用い,左室短軸乳頭筋レベルで中隔,後壁,前壁,下壁のねじれを分析した.心尖部からみて,時計方向回転角(拡張期),反時計回転角(収縮期),総回転角(前 2 者の和)の 3 項目を計測した.【結果】(1)各部位ともに収縮期に反時計回転し,拡張期に時計回転した.(2)反時計回転では,中隔と後壁に比べて前壁・下壁が有意に小であった(中隔4.5 ± 2.3度,後壁5.1 ± 3.0度,前壁3.5 ± 2.1度,下壁1.5 ± 2.2度)(p < 0.001).(3)時計方向回転角は,下壁が有意に大であった(中隔1.5 ± 2.5度,後壁1.2 ± 1.7度,前壁2.3 ± 1.9度,下壁5.1 ± 3.8度)(p < 0.001).(4)総回転角は5.8~6.6度で,4 部位に有意差は認めなかった.(5)検査データは95%の症例で解析可能で,Bland-Altmanによる検者間の誤差は-0.02 ± 0.33度で,再現性は良好であった.【考察】本研究の結果,左室心筋のねじれには部位により 3 倍以上の差があることが明らかになった.その原因は不明ではあるが,解剖学的に,下壁は大動脈や脊柱に,前壁は前胸壁に接しており,収縮期反時計回転が制限される可能性が考えられた.心筋局所のねじれの分析においては,部位による差を念頭におかなければならない.

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