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先天性QT延長症候群における,貫壁性再分極時間のばらつきが示す薬物治療効果
あいち小児保健医療総合センター循環器科
安田東始哲,福見大地,沼口 敦,足達信子,長嶋正實

【背景】(1)QT延長症候群 1 型(LQTS1)モデルにisoproterenolを投与すると,M細胞活動電位持続時間(APD)が延長,心内膜・心外膜側細胞のAPDは短縮し貫壁性再分極時間のばらつき(transmural dispersion of repolarization:TDR)が増大する(Shimizu:Circulation 1998).LQTS2でもepinephrine投与によりTDRが増大する(Tanabe:JACC 2001).(2)LQTS1に対するβ遮断薬,LQTS2に対するmexiletineはTDRを減少させる(Shimizu:Circulation 1997,1998).(3)T-wave peak to end interval(TPE)はTDRの良好な指標である(Shimizu:Circulation 1997).(4)TPEは続発性LQTSにおける不整脈源性の指標である(Yamaguchi:Clin Sci 2003).【目的】先天性LQTS1,2におけるTDRと治療効果との関係を明らかにすること.【対象】当センターに登録されたQT延長(LQT)患者23例.【方法】対象を症状のないLQT群14例,運動時失神または音声による失神を来したLQTS群 9 例に分け,さらにLQTS群を治療後失神のないコントロール良好(c-LQTS)群 6 例と失神を来したunc-LQTS群 3 例に分けた.各患者の安静時12誘導心電図,トリプルマスター負荷心電図(直後,1,3 分後)から各誘導間の最長QT・QTpを測定,安静時および負荷後の各QTc,QTcp{=(Q波-T波頂上間隔)/(RR間隔)√0.5},TPE(= QTc-QTcp)を各群間で比較検討した.治療はβ遮断薬を 6 例,気管支喘息合併例 2 例にmexiletineを投与した.【結果】LQT群,c-LQTS群,unc-LQTS群で,おのおの安静時QTc 0.49,0.47,0.51,安静時QTcp 0.38,0.36,0.42,安静時TPE 0.11,0.11,0.09,負荷後QTc 0.51,0.51,0.55,負荷後QTcp 0.40,0.40,0.42,負荷後TPE 0.11,0.11,0.12.【結論】(1)安静時QTcは,LQT群よりc-LQTS群でより短い.(2)負荷後QTcおよびTPEは,LQT群とc-LQTS群とで差がなく,unc-LQTS群で最も延長している.(3)安静時および負荷後QTc,負荷後TPEは,先天性LQTS1,2 に対する治療効果の指標となり得る可能性がある.

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