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大動脈縮窄症術後にイソプロテノール負荷により血圧差を生じる症例への治療介入は必要か?―バルーン血管形成術を施行した 3 例の経験―
国立成育医療センター循環器科
江竜喜彦,磯田貴義,進藤考洋,横山晶一郎,金 基成,金子正英,石澤 瞭

【背景】大動脈縮窄症(CoA)の術後長期予後にかかわる問題として高血圧があるが,高血圧は必ずしも安静時の縮窄部の圧較差(PG)の有無と関連しない.一方,術後CoAにおいて運動時に初めて縮窄部のPGが生じる症例があり,手術部位の伸展性異常が関与していると考えられる.このような症例で長期的に高血圧が生じるリスクがあるならば治療の対象となる.【目的】CoA術後にイソプロテノール(ISP)負荷によって縮窄部位に有意なPGが生じた症例の特徴を記載し,症例に対するバルーン血管形成術(PTA)の急性期効果について検討すること.【対象と方法】2005~2006年にかけCoA術後の心臓カテーテル検査時に安静時PG < 10mmHgであったが,ISP負荷(心拍数50%上昇)でPG > 20mmHgと有意な上昇をみた 3 症例.いずれもPTAを施行.この症例について縮窄部径,ISP負荷前後のPGの変化(ΔPG = ISP負荷時PG-安静時PG),縮窄部位の伸展性〔elasticity:心周期における径のmaxおよびminからelasticity =(max-min)/min × 100(%)と計算〕についてPTAの前後で比較し拡張の急性期効果を判定.【結果】(1)縮窄部径:3.7→4.6,4.7→5.5,4.4→6.2(mm).(2)ΔPG:21→10,32→0,23→0(mmHg).(3)縮窄部elasticity(下行大動脈部elasticity):2.0→12.0(22.3→23.5),7.7→12.0(23.1→22.9),0.4→12.9(14.2→13.8)(%).【考察】ISP負荷でのみ有意なPGが生じるCoA術後症例では,PGの成因として心拍出が増加した際に伸展性が制限された縮窄部が追随できず,動脈圧波の伝播に問題が生じることが考えられる.このような症例に対して,PTAが縮窄部位を拡大するとともに伸展性を高め,ISP負荷時のPGを改善させたことは,従来の基準では適応外とも考えられる病態でもPTAの効果が高いことを意味している.PTA適応基準の妥当性,長期的効果について評価が必要だが,この症例群に対する積極的なPTAの是非について今後検討していくことが重要である.

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