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Mustard術後遠隔期の心房頻拍に対するカテーテルアブレーション―CARTOを用いた 2 症例の検討―
獨協医科大学心血管・肺内科1),岩手医科大学循環器医療センター小児科2),自治医科大学循環器内科3)
籏 義仁1),小山耕太郎2),高橋 信2),三橋武司3)

心房内血流転換術では心房切開やbaffle形成などの外科的操作が行われ,術後遠隔期に上室性不整脈が出現し得ると報告されている.複雑な解剖を有するMustard術後 2 例の心房頻拍(AT)に対して,electro-anatomical mapping(CARTO)を用いて不整脈基質同定と根治術を試みた.【症例 1】28歳の女性.3 歳時に完全大血管転位(TGA)III型に対するMustard術が施された.23歳時に洞不全症候群のため永久ペースメーカ(VVI)の植込みを受けた.抗不整脈薬多剤抵抗性のAT(CRBBB,136/min)が確認された.CARTOを用いて両心房全体のマッピングが可能であった.voltage mapでは両心房に広範囲な低電位部位が存在していた.心房興奮時間は頻拍周期(440ms)に一致していた.肺静脈心房から体静脈心房へと両房室弁輪を時計方向に旋回し右房峡部を頻拍回路の一部とするマクロリエントリATと判断した.baffleをはさみ三尖弁-下大静脈(TV-IVC)間に線状焼灼を行い頻拍は停止した.【症例 2】24歳の女性.2 歳時にTGA I型に対するMustard術が施された.17歳時に洞不全症候群に対する永久ペースメーカ(VVI)の植込みを受けた.抗不整脈薬多剤抵抗性のATがあり,EPSを行った.肺静脈心房全体をマッピングすることは困難であったが,右房峡部でconcealed entrainmentが得られ,post pacing intervalは頻拍周期(215ms)に一致した.TV-IVC間に線状焼灼を行い頻拍は停止した.2 症例ともに他の頻拍は誘発されず,現在までATの再発はない.【まとめ】2 症例の頻拍は右房峡部を回路の一部としたマクロリエントリATであり,baffleをはさむ両心房からの線状焼灼で根治し得た.CARTOを用いることで,複雑な解剖を有する心房内血流転換術後心房頻拍の診断と治療が可能であった.

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