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Holt-Oram症候群の疾患遺伝子TBX5の遺伝子解析
東京女子医科大学国際統合医科学インスティテュート1),先端生命医科学研究所2),循環器小児科3),国立成育医療センター4),兵庫県立こども病院5),東京医科歯科大学6)
八木寿人1, 2),秋元 馨3),百々秀心4),黒江兼司5),大西寿和6),今村伸一郎1),松岡瑠美子1-3)

【目的】Holt-Oram症候群は常染色体優性の遺伝病で,新生児約100,000人に 1 人の割合で生まれる.この症候群は橈骨系を中心とした上肢の奇形と心房中隔欠損等の心奇形によって特徴付けられる.この症候群は染色体12q24に存在するTBX5に変異が生じることによって引き起こされることが知られている.Holt-Oram症候群の発生機序とTBX5との関係を明らかにし,その病態解明を行うことを最終目的とする.第一段階としてTBX5の遺伝子解析を行い,TBX5の遺伝子型と表現型の比較検討を行い,Bassonらによって報告されているような変異の場所による表現型の特異性の有無を検討した.【対象および方法】典型的な表現型を呈するHolt-Oram症候群の患者ならびにその家族の同意のもと,採血を行い,リンパ球細胞株の作成およびゲノムDNAを抽出し解析を行った.【結果】Holt-Oram症候群の患者10家系においてTBX5遺伝子の遺伝子解析を行った結果,5 家系(50%)に変異を認めた.その内訳はmissence変異 2 家系,deletion 1 家系,insertion 1 家系,splicing siteの変異 1 家系であった.変異の場所と表現型を詳細に検討したが,今までに報告されていたような変異の場所による表現型の大きな特異性は確認されなかった.【考察】今回認められた 5 種類の変異のなかには,核移行シグナル中のアミノ酸が置換する変異や,splicing異常が起こると考えられる変異など興味深い変異が存在する.今回,変異の場所による表現型の特異性は確認されなかったが,それぞれの変異TBX5の機能変化による表現型の特異性が存在する可能性がある.今後,それぞれの変異TBX5の機能を解析し,表現型と比較検討することによりHolt-Oram症候群の発生機序とTBX5との関係を明らかにし,その病態解明を行う必要がある.

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