P-II-55
Stanniocalcin1の心筋細胞における酸化ストレスへの影響
山梨大学小児科
小泉敬一,星合美奈子,杉山 央,角野敏恵,杉山 剛,喜瀬広亮,中澤眞平

【はじめに】stanniocalcin1(STC1)は,糖蛋白ホルモンで不全心筋に発現し,心筋保護作用をもつと考えられているが,その生理活性はほとんど解明されていない.以前,われわれはouabain(Na+/K+ ATPase阻害剤)による心筋細胞過収縮とCa2+過負荷で生じる拡張期の細胞内Ca2+濃度上昇をSTC1が抑制したことを報告した.本研究では,STC1が酸化ストレスによる心筋細胞傷害に対し心筋保護作用を示すかを検討した.【方法】STC1にNO donorであるSIN-1(3-morpholinosydnonimine)を添加したものを成獣ラット単離心筋細胞に作用させ,細胞過収縮数とCa2+ transientを計測した.【結果】SIN-1は,心筋細胞の過収縮割合を増加させなかった.しかし,SIN-1はCa2+ transientの頂値を低下させた〔74.2 ± 4.0% in 100μM SIN-1(n = 3,vs.0 min,p < 0.05),66.6 ± 13.9% in 500μM SIN-1(n=4,vs.0 min,p < 0.05)〕.2.5nM STC1は,SIN-1によるCa2+ transientの頂値低下を変化させなかった〔77.3 ± 7.0% in 100μM SIN-1 + 2.5nM STC1(n = 3,vs. 0min,p < 0.05;vs. SIN-1 alone,no significant),65.2 ± 7.4% in 500μM SIN-1 + 2.5nM STC1(n=5,vs. 0min,p < 0.01;vs. SIN-1 alone,no significant)〕.【考察】SIN-1は,心筋細胞を過収縮しなかったことから,SIN-1による細胞傷害はouabainによるものとは別の機序によるものと考えられた.SIN-1はNOとsuperoxideを生じ,反応することでperoxynitrite(ONOO-)を放出する.これにより,心筋細胞ではcAMP濃度を低下させ,ホスホランバンのリン酸化を抑制することでCa2+ transient頂値を低下させると報告されている.STC1の生理活性は,このSIN-1により生じる酸化ストレスに影響しないと考えられた.

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