P-II-59
ミトコンドリアCa2+濃度に対するNOの影響
山梨大学小児科
角野敏恵,星合美奈子,杉山 央,杉山 剛,喜瀬広亮,中澤眞平

【はじめに】NOはミトコンドリアCa2+濃度([Ca2+]m)を規定する因子の一つとして報告されている.今回われわれは単離心筋細胞を用いてCa2+過負荷による心筋細胞傷害時の[Ca2+]m上昇に対するNOの影響を検討した.【方法】成獣雄マウスの心筋を酵素灌流法で単離した.得られた単離心筋細胞をミトコンドリアCa2+のマーカーであるRhod2-AMで染色し,digitoninで透過処理を行った細胞を使用した.まず1,000nM Ca2+溶液に 5 分間暴露し細胞傷害を惹起し,その前後の蛍光を測定して[Ca2+]mを評価した.1,000nM Ca2+溶液のみのcontrol群と,PTP(permeability transition pore)inhibitorであるcyclosporin A(0.2μM)添加群(CsA)で比較検討した.さらにNOの前駆物質であるL-arginine除外群〔L-Arg(-)〕,NOS inhibitorであるL-NMMA(0.1mM)添加群(L-NMMA)について同様に比較検討した.【結果および考察】control群ではRhod2-AMの蛍光はF/F0 = 2.29 ± 0.17(n = 17)まで上昇したがCsA群ではF/F0 = 1.1 ± 0.09(n = 17)で有意に低値であった.CsAはPTP経由のCa2+流入を抑制するため,今回の実験系は[Ca2+]mを反映していると考えられた.L-Arg(-)群,L-NMMA群ではおのおのF/F0 = 1.63 ± 0.12(n = 11),F/F0 = 1.83 ± 0.08(n = 12)であり有意に低値であった.これらの結果よりCa2+過負荷時の[Ca2+]m上昇にNOが関与しており,NO産生を抑制することにより[Ca2+]mは抑制されると考えられた.

閉じる