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未熟心における低酸素耐性とマグネシウムとの関連性について
順天堂大学小児科・思春期科1),第二生理学2),衛生学3)
佐藤智幸1),渡邉マキノ2),関根美和3),篠原厚子3),稀代雅彦1),岡田隆夫2),山城雄一郎1)

【背景】近年,低酸素-再酸素化障害におけるマグネシウム(Mg)の心筋保護作用が,臨床的,実験的に検討されており,その生理作用が徐々に明らかとなってきた.一方,未熟心が低酸素に対し高い耐性があることは以前より知られているが,その機序はいまだ不明のことが多い.【目的】未熟心における低酸素に対する高い耐性とMg動態との関連性を成熟心と比較・検討した.【方法】未熟心は 1 週齢,成熟心は10週齢のラット摘出心を使用した.心臓を摘出後,ただちに定流量(成熟心:13ml/min,未熟心:2ml/min)ランゲンドルフ灌流を行い,20分の安定化後,低酸素灌流(45min)-再酸素化(30min)を行った.低酸素-再酸素化による心機能の推移,心筋障害を心拍数,左室発生圧(未熟心は収縮張力),拡張末期圧(拡張期張力)の変化およびGOT遊離量の面から検討した.また,灌流実験後の心筋のMg含有量を原子吸光法にて総Mg含有量として定量した.【結果】成熟心は低酸素灌流中,心拍数は低下もしくは心停止するが,未熟心の心拍数は軽度低下するのみで心停止することはなかった.再酸素化時の心機能は成熟心に比べ,未熟心では有意に回復が早かった.最終的な心機能の回復は成熟心と未熟心で差はなかった.成熟心筋のMg含有量は低酸素灌流前:811.7 ± 37.2μg/g(乾燥重量),低酸素-再酸素灌流後:600.2 ± 71.1e/gとなり低酸素-再酸素灌流により有意に低下した(p < 0.05).それに対し未熟心筋のMg含有量はそれぞれ830.3 ± 96.7μg/g,833.9 ± 70.8μg/gとなり低下しなかった.【考察】未熟心の高いMg保持能力が,低酸素に対する高い耐性に関連している可能性が考えられた.

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