P-II-63
3mm径の人工血管を用いてBT shunt術を行った単心室症の成績
神奈川県立こども医療センター心臓血管外科
梶原敬義,武田裕子,小坂由道,麻生俊英

【背景と目的】単心室症例が右心バイパス術に安全に到達するためには,(1)低い肺血管抵抗維持,容量負荷の抑制,(2)房室弁逆流防止,(3)心機能保持が重要である.このため肺血流を過度に増加させないことが重要と考え,小口径人工血管を用いてBT shunt術を施行した.しかし,小口径BT shuntでは,(1)肺動脈の成長,(2)早期の閉塞,(3)右心バイパスへの到達度などに懸念がある.3mm人工血管を用いた単心室症例について検討した.【対象】2004年 8 月から 2 年間にBT shunt手術を行った単心室症例17例のうち3mm人工血管を用いた 8 例.いずれの症例もshunt側の肺動脈径が4mm以上.中央値は,年齢24日,体重3.48kg.PDA 5,heterotaxy 5,TAPVDの合併 1,absent PV 1,共通房室弁 5.【術前と手術】5 例でPGE1を5ng/kg/min使用.房室弁の逆流はすべてmild以下.手術は側開胸を基本とし対側の肺に処置を加えた 3 例で胸骨正中切開とした.人工血管は3mm e-PTFE graft使用,シャント作成後PGE1は全例中止.【術後】PDAは,術後 1 日目で狭小化,退院時には全例閉塞していた.アスピリンとワーファリンを用いた抗凝固療法を施行.2 例で在宅酸素を導入した.【結果】7 例は長期生存.1 例は食道閉鎖,気管軟化症に手術を要し長期挿管となり敗血症で死亡.両側グレン術前の心カテでは,酸素飽和度78 ± 6%,PA index 277 ± 116,肺血管抵抗係数1.4 ± 0.9,肺体血流比1.5 ± 0.6で良好な肺動脈の成長が得られた.房室弁逆流は全例mild以下で房室弁機能も維持された.7 例で生後165 ± 71日目に両側グレン手術を行った.うち 4 例がフォンタン手術を完遂し 3 例が待機中である.【まとめ】(1)肺動脈が過度に低形成でない単心室症 8 例に対し,3mm人工血管によるBT shunt術を施行した.(2)小口径の人工血管によるBT shuntによって,良好な肺血管の成長が得られ,房室弁逆流の増大,心不全の悪化を来さず,安全に右心バイパス術に到達できた.

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