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第 1 期手術として両側PA bandingを選択しFontan型手術に到達した左心低形成症候群:経過中の問題点とカテーテル治療の役割
三重大学小児科1),胸部心臓血管外科2),山田赤十字病院小児科3),はやかわこどもクリニック4)
澤田博文1, 3),三谷義英1),大橋啓之1),早川豪俊1, 4),高林 新2),新保秀人2),駒田美弘1)

左心低形成症候群(HLHS)に対し,われわれは第 1 期両側PA bandingを施行し,低容量lipo-PGE1による動脈管の開存維持の後,第 2 期同時Norwood/Glenn術(N/G)に至る経過につき報告した(J Thorac Cardiovasc Surg 2007, in press).今回,この戦略およびmodified Van Praagh法によりFontan型(F)手術に到達した症例 5 例について,問題点とカテーテル治療(CI)の役割について検討した.【対象】F術を終了した 3 例とF術前の評価を終え手術日待機中の 2 例のHLHS計 5 例.【結果】初期の 2 例の第 1 期手術はVan Praagh法,あとの 3 例はPGE1で動脈管を維持した.前者ではN/Gは 7~10カ月,後者では 3~4 カ月に施行した.合計15回の手術,23回のCIを行った.ACE阻害剤 2 例,beraprost 3 例,sildenafilは 2 例に投与されていた.CIは第 1 期術前には 2 例 2 回(すべてBAS),第 1 期術後 2 期手術までに 5 例 6 回(すべてBAS),第 2 期術後F術までに15回(PTA:CoA 3 例 6 回,Coil:APCA 3 例 4 回,Coil:VVshunt 3 例 4 回,PTA:SVC狭窄 1 例 1 回)であった.手術は,ASD作成,CoA修復,三尖弁形成を各 1 例で行った.第 2 期術後,平均肺動脈圧(左右肺動脈圧の平均)は15~19mmHg(16.5,中央値),肺動静脈圧差は7.5~11(8),PA indexは110.6~142.8(135.1),F手術前の平均肺動脈圧は12~17mmHg(13.5),肺動静脈圧差は5~6.5(5.5),PA indexは93.0~153.9(127.0)であった.F術後の評価を行った 3 例の平均肺動脈圧は11~13mmHgであった.【考察】HLHSではF術に至るまでに出現する問題に対しCIは有用であった.N/G術時期が遅く左房圧が上昇した早期の 2 例では,N/G後に肺動脈圧が高く,強度VV shunt,APCAを伴いCIを要し,N/G前にはBASによる左房圧管理が重要であった.N/G後に,VV shunt,APCAに加え,Re-CoAに伴う心機能不全,三尖弁逆流による心不全,肺静脈閉塞などが問題となったが,綿密なカテーテル検査による早期発見が重要で,CIに加えて,肺血管拡張療法,手術を組み合わせ管理することにより,Fontan達成が可能であった.

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