P-II-68
両側肺動脈絞扼術を初回手術とするHLHSの治療成績の検討
大阪市立総合医療センター小児心臓血管外科1),小児循環器内科2)
小澤秀登1),西垣恭一1),川平洋一1),康 雅博1),村上洋介2),江原英治2),鈴木嗣敏2),川崎有希2)

左心低形成症候群(HLHS)の治療成績はいまだ満足できるものではない.両側肺動脈絞扼術(bil-PAB)は低侵襲で循環動態の安定が得られ,初回手術として有用とされている.当科では初回手術でbil-PABを施行し,術後必要な症例にはBASを行い,生後 3 カ月をめどに 2 期手術としてNorwood手術と両方向性Glenn手術(Nor/BDG)あるいはBT shunt(Nor/BT)を施行している.これらの症例の治療成績を検討した.【対象】2003年12月~2006年 6 月に初回手術としてbil-PABを施行した 7 例(AA/MA 5,AS/MS with IAS 1,AA with VSD 1).在胎週数は39~41週,出生体重2,500~3,620g.bil-PABの施行時期は入院当日が 3 例,他の 4 例はN2を併用し入院後 1~4 日に実施した.banding周径は10mm長で施行した.【結果】術後,循環動態は速やかに安定し,PGE1CD 11~18ng/kg/minを持続投与することでPDAの維持は可能であった.日齢64~131で全例 2 期手術(Nor/BDG 5,Nor/BT 2)に到達.2 期手術前PAIは51~359(190 ± 113)mm2/m2.Nor/BDGのうち,手術死亡は 2 例で,術中出血と術後肺高血圧発作が原因であった.生存 3 例の術後経過は良好であったが,3 例すべてでPASに対しPTAを施行.2 例でPAI 91→160,87→114となり,fenestrated TCPCに到達したがfenestrationの閉鎖にはいまだ至っていない.4 カ月時にNor/BDGを施行した他の 1 例(AS/MS with IAS)はPTA後に,PAIは51→81に増加したが,SVC(22)と高値でありTCPCは断念.Nor/BTを施行した 2 例はともに生存.1 例は術前PAI 55と肺動脈は極めて低形成であり,術後 4 カ月時lt-mBTSを追加した.他の 1 例は検査待機中である.【まとめ】bil-PABは低侵襲であり,速やかに循環動態の安定が得られ,生後 2~4 カ月時に全例 2 期手術に到達可能であったが,肺動脈の低形成が問題となった.Nor/BDG例では術後のPTAが容易であるが肺動脈の成長は十分ではなく,Nor/BTでは肺動脈の成長を期待できると思われ今後も施行していく方針である.

閉じる