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Jatene手術における肺動脈形成:Pacifico法か新鮮自己心膜による再建か?
九州厚生年金病院心臓血管外科1),小児科2)
落合由恵1),井本 浩1),坂本真人1),長野一郎1),城尾邦彦1),柳瀬 豪1),瀬瀬 顯1),渡辺まみ江2),大野拓郎2),城尾邦隆2)

【目的】Pacifico法はJatene術後の肺動脈狭窄(PS)の発生を予防するのによい方法であるが,肺動脈の圧迫によって左冠状動脈の灌流を障害することがあり現在では新鮮自己心膜(fresh autologous pericardium:AP)を用いる施設が増えている.当院でPacifico法を導入した1993年 6 月から2006年12月までのJatene手術のうち,手術死亡 1,遠隔死亡 1 例を除いた49例を対象とし,2 群間(Pacifico群:24例,AP群:25例)で中期予後を検討.【対象】Pacifico群24例のうち,TGA I 17,TGA II 7 例で,先行手術はsubclavian flap + PAB 1 例.AP群25例では,TGA I 14,TGA II 8,DORV 3 例で,先行手術はsubclavian flap + PAB 1,Blalock-Park + PAB 1 例.手術時平均日齢はPacifico群22 vs. AP群27日,手術時平均体重はPacifico群2.9 vs. AP群3.3kg.術後平均観察期間はPacifico群7.9年 vs. AP群3.4年でPacifico群の方が長かった.【結果】退院前には両群間で右室圧,主肺動脈圧,左右肺動脈圧に差はなく,圧較差20mmHg以上のPSをPacifico群 2 例,AP群 6 例に認め,以後Pacifico群 2 例にバルーン拡大術(BAP)を,AP群 2 例に計 3 回のBAPを施行.両群ともPSに対する再手術はなく経過.冠動脈に関してはPacifico群 2 例に術後 1 カ月後に左冠動脈の閉塞があり,うち 1 例では術後12年目にCABG(LITA-LAD)を施行.AP群で 1 例に 5 年後の心カテにて右冠動脈の閉塞,1 例に左冠動脈の狭窄を認めた.【結語】PS,冠動脈合併症に関してPacifico法とAPによる肺動脈再建は差がなかった.新鮮自己心膜による肺動脈再建は,観察期間もPacifico法に比較して短く今後の経過観察が必要である.

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