P-II-74
右室低形成を伴う先天性心疾患の外科治療
富山大学第一外科1),小児科2)
芳村直樹1),村上博久1),北原淳一郎1),大高慎吾1),上勢敬一郎2),渡辺綾佳2),齋藤和由2),市田蕗子2),三崎拓郎1)

【目的】右室低形成を伴う先天性心疾患では右室の能力に応じた術式の選択が必要となる.本疾患群に対する治療法とその結果について検討.【対象と方法】2001年以降外科治療が行われた10例(左室型単心室および三尖弁閉鎖症を除く).純型肺動脈閉鎖(PA-IVS)5,重症肺動脈狭窄(c-PS)2,三尖弁狭窄(TS)3 例.右室能力の指標として右室容積および三尖弁輪径よりRV-TV index = RVEDV(%N) × TVD(%N) × 10-4を算出.【結果】〈PA-IVS,c-PS〉初期治療はBT shunt 3,open Brock(+ BT shunt)3,PTPV 1 例.膜様閉鎖例にはopen Brockを第一選択とし,2005年以降は経過観察中に適宜PTPVを追加し,順行性血流を増加させる方針とした.最近の 2 例ではこの方針により右室が発育し 1 例は二心室修復を終了(RV-TV index:0.166→0.221→0.261),1 例は待機中(0.198→0.435).十分な右室容積(RVEDV:82.3%)を有し,新生児期にPTPVが施行された 1 例は直後から高度の右室流出路狭窄を来し,2 日後にBT shunt追加.最終修復術はTCPC 2,1 + 1/2修復 2,二心室修復 1,待機中 2 例.1 + 1/2修復(original Glenn)の 1 例で遠隔期に右肺動静脈瘻が発生し,右室-右肺動脈間に導管作成術施行.〈TS〉症例 1:心房レベルでの右左短絡によるチアノーゼを呈し,2 歳時にASD閉鎖術施行.3 年後,収縮性心膜炎を併発し心膜切除術待機中.症例 2:CoA + ASD + PS + TS.RVEDV 89.4%N,TVD 60.3%N,RV-TV index 0.539で 1 歳10カ月時EAA + ASD閉鎖 + PS解除術が施行され,術後経過良好.症例 3:ASD + VSD + PHの診断で,生後 2 カ月時にASD + VSD閉鎖術施行.術後右心不全とチアノーゼが出現.10歳時の精査にてTSが判明.RVEDV 47.4%N,TVD 54.9%N,RV-TV index 0.260で遺残VSD閉鎖 + ASD部分閉鎖術が施行され,術後経過良好.【まとめ】(1)右室低形成を伴う先天性心疾患10症例に外科治療を施行.(2)手術死亡,遠隔死亡ともに認めなかったが,適切な術式を選択しないとさまざまな問題が発生する.(3)RV-TV indexは術式選択の指標となり得る.

閉じる