P-II-75
成人期先天性心疾患の右室機能を評価する―組織ドプラを用いた新たなるゴールデンスタンダード―
大阪大学心臓血管外科1),臨床検査部2)
前畠慶人1),市川 肇1),上野高義1),帆足孝也1),上田美奈子2),松宮護郎1),澤 芳樹1)

【背景】右室流出路再建を伴う心内修復術を施行した症例の遠隔期においては肺動脈狭窄,閉鎖不全などによる右心機能不全が成人期に問題となり再手術の適応となることがある.しかしながら右心機能の定量的評価にはいまだゴールデンスタンダードとなるものは存在しない.近年,非侵襲的かつ簡便であり,特に血流変化による影響がないとされている組織ドプライメージング(TDI)を用いた心機能評価が注目を浴びている.そこでわれわれは成人期右心負荷疾患のTDIによる右心機能評価を試みた.【対象と方法】TF,DORV,PA/VSD術後遠隔期と成人ASD患者計15例(44.0 ± 18.0歳)について,従来のドプラ検査(三尖弁E,A波など)に加え,三尖弁輪外側におけるTDIによる測定〔S,E’,A’波,等容収縮・拡張時間(ICT・IRT),駆出時間(ET)〕を行った.E/E’,E’/A’,MPI〔=(ICT + IRT)/ET〕,T index(E/MPI),T’ index(E’/MPI)を算出し,各相関を検討した.また対象を(1)RVSP = 40mmHg未満(ノーマル:N1群)と以上(PH群),(2)心不全症状なし(N2群)とあり(HF群)のおのおの 2 群に分類し比較検討した.【結果】従来右心機能評価として用いられるRVSPとRVEFは相関係数r = 0.28の低相関であった.RVSPと各指標間ではE’/A’とMPIがそれぞれr = 0.33,0.37の軽度相関を認めた.RVEFとの相関はT'index,T index,MPIがそれぞれr = 0.44,0.46,0.58であった.強度の相関関係はMPIとT’ index(r = 0.77),T index(r = 0.89)間に認めた.群別ではPH群がN1群よりE’/A’が高値の傾向にあった(p = 0.08).またHF群はN2群よりT’ indexが有意に高値であり(27.1 ± 10.4と13.3 ± 4.1,p < 0.01),T’ indexによる心不全の診断はカットオフ値19.1で感度86%,特異度89%であった.【まとめ】今回われわれは成人期先天性心疾患の右心不全の定量的評価にTDIを用いたが簡便かつ有用であった.今後遠隔期再手術のタイミングをうかがう指標となる可能性を考えている.

閉じる