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当院における成人先天性心疾患患者の不整脈の現状
順天堂大学小児科・思春期科
福永英生,秋元かつみ,稀代雅彦,大高正雄,大槻将弘,織田久之,佐藤圭子,山城雄一郎

【背景と目的】先天性心疾患患者の成人期術後長期経過において,不整脈は突然死の危険因子にもなり重要である.当院での成人先天性心疾患(以下ACHD)における不整脈の合併について検討する.【対象と方法】当科または循環器内科で診療継続中の満20歳以上のACHD42人(男:女=25:17,年齢20~38歳,平均25.7歳)に対し,疾患群,長期経過後の不整脈の有無を後方視的に検討した.なお,周術期不整脈は除外した.【結果】疾患群(人)はTOF 11,TGA 8,VSD 12,TAPVR 4,ECD 1,CoA 2,AS・AR 2,PVS 1,PDA 1.TOFでは 1 人が根治術 9 年後にPAC,PVC,PSVTを発症し,1 人が15年後に運動誘発性VTを合併した.TGAでは 5 人(62.5%)が術後10~19年(平均15.8年)で上室性不整脈を合併し,このうち 1 人は洞不全症候群による心臓ペースメーカ埋込み例(PM),4 人はAfを発症した.このうちFontan術後18年の 1 例はAfで自宅突然死した.VSDでは 3 人(25%,すべて再手術後)が術後 5~24年で不整脈を合併し,2 人はAf,1 人はPVCであった.全体では遠隔期不整脈発症は10人(23.8%,男:女 = 7:3,20~28歳,平均25.0歳),うち 8 人(19.0%)が上室性不整脈であり,10人の発症は術後平均15年であった.またPM例以外には,すべて抗不整脈薬を使用していた.【考案】遠隔期に不整脈を発症してきた10人は,術前の病態がより重症なケースが多かった.ACHD患者には,現在ほとんど行われなくなった心房内操作を要する術式や,複数回の手術既往など,不整脈発症のリスクファクターを有するケースも多い.同じ不整脈であっても,ACHD例の場合はよりsevereな経過をとる危険が高く,厳重な長期経過観察が重要であるだけでなく,積極的な治療介入が必要である.

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