PD-2-4
Fontan手術後の妊娠・出産の現状と問題
日本小児循環器学会「成人期に達した先天性心疾患患者の妊娠出産の現状とガイドライン作成」班
赤木禎治,丹羽公一郎,篠原徳子,佐地 勉,牛ノ濱大也,富田 英,益田宗孝,池田智明,越後茂之,Lee Heung Jae,中澤 誠

【目的】Fontan術後遠隔期の問題点を考えるうえで,女性患者における妊娠・出産の問題は避けて通ることのできない問題点である.【方法】日本小児循環器学会「成人期に達した先天性心疾患患者の妊娠出産の現状とガイドライン作成」班,および韓国小児循環器学会においてFontan術後の妊娠例について調査したところ14名の女性で17回の妊娠が報告された.このデータをもとに,Fontan術後における妊娠・出産の問題点について検討した.【成績】Fontan術施行時年齢中央値は17.0(7~30)歳,妊娠時年齢中央値は29.5(20~35)歳であった.Fontan術の内訳はAPC 9 例,TCPC 3 例,RV-PA conduit 2 例であった.妊娠前の酸素飽和度は96(90~99)%であった.妊娠前のNYHA classとしてはclass Iが 3 例,class IIが11例であった.17回の妊娠中,出産は11回,人工妊娠中絶 1 回,流産 5 回であった.流産は 7~10週の間に起こっていた.11回の出産の在胎週数中央値は36(24~38)週,出生体重中央値は1,912(510~2,410)gであった.分娩形式は 1 例を除いて帝王切開が選択されていた.妊娠中心不全の悪化は11例中 8 例に認められ,うち 6 例は利尿剤もしくはジギタリスの投与を受けていた.妊娠中の心房性もしくは心室性不整脈は 3 例に認められ,2 例は薬物治療,1 例はカテーテルアブレーションが施行された.分娩時の出血性合併症を45%に認めた.分娩後は心不全の増悪(8 例),不整脈増悪(6 例),血栓形成(1 例)が発生した.超低出生体重児 1 例を除いて,分娩後に母体や児の死亡はなかったが,APCで出産した 3 人の女性ではNYHAの悪化が認められTCPCへのconversionが検討されていた.【結論】Fontan術後でも妊娠・出産は可能であるが,流産,早期産,不整脈,心不全増悪の頻度は高い.高度な循環器,周産期管理の行える条件でのフォローアップが必要と思われる.

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