B-III-18
下大静脈径の呼吸性変動と中心静脈圧との関係
埼玉医科大学小児心臓科
岩本洋一,先崎秀明,石戸博隆,松永 保,竹田津未生,小林俊樹,加藤木利行,天貝友美,上田 望,伊東志乃,小澤英理

【背景】前回われわれは,一部の小児心疾患において下大静脈(IVC)の径やその呼吸性の変動(IVC collapsibility index:IVCCI)が中心静脈圧(CVP)を反映することを報告した.今回われわれは,幅広い疾患群でかつ人工呼吸器下の影響も考慮し,小児心疾患におけるIVCCIとCVPの関係について検討した.【方法】当院における各種小児心疾患患者173例:自発呼吸下群(A群)128例(0~18歳:中央値4.5歳)・人工呼吸下群(B群)45例(0~16歳:中央値 8 歳)において,心臓カテーテル検査時あるいは手術治療前後に,経胸壁超音波の肋骨弓下アプローチにてIVC直径を吸呼気時で計測し,実測CVPとの関係を検討した.IVCCIは(IVC最大径-IVC最小径)/IVC最大径にて算出した.計測点はIVC-右房接合部(RA点)とIVC-肝静脈合流直前(HV点)の 2 点を選んだ.【結果】両群において,IVCの最大径を体表面積で正規化したものとCVPは有意な相関を示さなかった.A群において両点ともCVPが上昇するとIVCCIが小さくなる負の相関を認めた.A群中のCVP 10mmHg以上の症例において,RA点ではIVCCI 0.2未満にて感度100%・特異度87%であり,HV点ではIVCCI 0.25未満にて感度83%・特異度89%であった.しかしB群では同様の条件での検出率はRA点で感度100%・特異度10%であり,HV点では感度80%・特異度40%であった.【考察】IVCCIは自発呼吸下の小児心疾患患者において,CVPの高低を推定するうえで簡便で侵襲の少ない有用な指標である.しかし人工呼吸下でのIVCCIはCVP推定の指標にはならず,人工呼吸による胸腔内圧上昇がIVC径に影響を与えている可能性が示唆された.

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