会長賞候補 1 
骨髄由来細胞と造血幹細胞のマウス実験的肺高血圧への関与
名古屋大学小児科1),三重大学小児科2),輸血部3),生理学4),麻酔科5),胸部心臓血管外科6)
加藤太一1, 2),澤田博文2),池山夕起子2),出口隆生2),桝屋正浩3),丸山淳子4),丸山一男5),新保秀人6),駒田美弘2),三谷義英2)
【背景】近年,動脈硬化等の種々の血管病変において,骨髄由来細胞の関与が報告されている.低酸素性肺血管病変における骨髄由来細胞の関与および,その関与する分画については明らかではない.【目的と方法】低酸素性肺血管病変における骨髄由来細胞および造血幹細胞の関与についてマウス骨髄移植モデルを作成し検討した.4~6 週齢のC57BL/6Jマウスに放射線照射(9.5gray)を行い,eGFPトランスジェニックマウスから得た骨髄単核球を静注して骨髄移植を行った.(TNC移植マウス,n = 24)また,造血幹細胞についてはeGFPトランスジェニックマウスから分離したCD34-,c-kit+,Sca-1+,lineage marker-のいわゆるKSL分画を同様に骨髄移植した(造血幹細胞移植マウス,n = 12).移植後 6~8 週後より,低酸素環境下(H群)と通常酸素(N群)とでそれぞれ21日間飼育した後に,肺組織を得た.得られた肺組織より,骨髄由来細胞および造血幹細胞の低酸素性肺血管病変への関与をCD31,αSMA,vimentin等の組織特異的マーカーを用いた蛍光多重染色により共焦点レーザー顕微鏡にて検討した.【結果】すべてのマウスで移植後の生着を確認した.TNC移植マウスではH群にてCD31+,eGFP+骨髄由来内皮細胞を認めたが,N群では認めなかった.血管平滑筋マーカーであるαSMAを発現する細胞ではTNC移植マウス,KSL移植マウスの両方において,H群,N群ともにeGFP陽性細胞を認めなかった.【結論】低酸素性肺血管病変に対して骨髄由来細胞の関与が認められ,今後その働きをより明らかにすることにより治療への応用が期待できる.そのなかで造血幹細胞の病変への関与との差異についてもあわせて報告する.


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